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-------------●ここは鋼の錬金術師「ロイ×エドSSリレー企画」の二次創作サイトです♪●-------------※全ての画像・テキストの無断掲載持ち帰りはしないでください・初めての方は「about」をお読みください※since07/10/25
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トントン・・・・・。


遠くで、何か音がした。

「あれ?」

うっかり居眠りをしてしまったのだろうか。
気が付くとソファに横になっていた。

そうだ自分は酷い吹雪にこの場所に足止めをくっていたのだった。
見れば暖炉の火が小さくなってきている、どうりで寒い筈だ。
ぞくりとした寒気に身体を震わせながら、エドワードはソファから起き上がった。

トントンと再び聞こえたノックの音。
慌ててドアへと近づいた。

「え~と…どなた?」

「私だ」

えっ!?

聞き間違えようのない、甘いテノールの声が外からする。

「うっ嘘だろっ!!な、なんで大佐がここに!?」

「嘘なものか、早くここを開けてくれ」

ガチャリ。
ドアを開けると。

そこにはいつもの青い軍服に黒いコートを羽織ったロイ・マスタングの姿があった。


あ・・・・れ?


そんな大佐の姿に何か、妙な違和感が頭を通り過ぎて、エドワードは暫し動けなかった。
そして何故か自分の視線は大佐の足元に落ちた。
勿論そこにはなにもある筈もなく・・・・ただの雪の地面である。


「あんたさ・・・・手ぶら?」思わず口に出たのは、自分でも思わぬ台詞だった。

「は?」
ロイは間の抜けた声でエドワードの言葉に固まった。

「や、その何か持っ来てたんじゃないかって・・」

「すまないが君を助ける為にやって来たのであって、お土産などないぞ?」

「ああ、いやそんなつもりじゃ・・・」



なんだろう、心に残る妙な違和感。
何か、何か男が持ってきていたような気がしたのだ。
お土産を?いや、何か微妙な部分が違っているような気がする。


「なんか、前にもこんなことあった・・・・ような?」

「そう、かな?」

「っぁ・・!」
突然ロイの背後を指差して、エドワードが声をあげた。

「どうした!?」

「今、なんか・・・・あんたの後ろを小さい茶色いのが横切った!」
そう言えば、ロイは慌てて振り返ったが。
既にそこには何もいない。

「キツネか何かじゃないのかね?」

「カワウソ」

「え?」

「や、なんか。今急にそんなふうに思って。三日前に助けたんだ、多分今見たような奴。あれ、カワウソだったんじゃねーかって・・・遭難しかけてたみたいでさ、あれからずっと心配で・・」

言いかけのままで、いきなりロイに抱きすくめられた。

「そんなものの心配はもういいよ、君だってここで遭難しかけていたろう?」

「っ!」
エドワードは突然の抱擁に戸惑い、動揺のあまり動けなくなってしまった。

「心配したよ、無事で・・・・よかった」
聞いたこともないようなロイの真剣な声音。
この男の声をこんなまじかで聞いたのは初めてで。

心臓は破裂しそうに跳ね上がり、煩いくらいにドクンドクンと波打っている。
身体中の熱という熱が、全部顔に集まったのではないかというぐらい・・・・顔が熱い。

「なっ・・・・なっ・・」
なにしやがる!っと、思わず振り払って殴り飛ばしてやろうと上がった手。



その時。


”自分の気持に正直に”



どこからともなく、声が聞こえた。
確かに、そう聞こえた。

上がりかけていた手から力が抜け、行き場を失って戸惑う。


「エドワード・・・・・」
低いテノールで初めて名を呼ばれれば、心臓が止まりそうになって息を飲んだ。

「大佐・・・・」


宙に浮いたままだったその手は、名を呼ばれることにより行き先を見つけ。
そのまま男の背にゆっくりと回される。


が。


ズキューン!!!!

という銃声がなった。
雪が降りしきる音の少ない世界に、それは静かな山肌を伝って反響してきた。
開け放たれたままのドアから思わず二人は外を見た。

そして暫しの沈黙ののち二人とも・・・・・何も言わずにお互いの顔を見やった。
どうやら同じ結論に至っているのは間違いないらしい。



「今の、中尉の威嚇射撃・・・・だよな?」と、エドワードが冷たい視線を投げれば。

「まずいな、もう追っ手が」と言いながらさり気なくロイは視線を逸らす。

「追っ手!?あんたっ、また仕事さぼってきたのかっ」

「君が心配で仕事が手につかなかったんだっ!」

「だからって中尉に無断で来たのかよっ!ちゃんと仕事してから来いっ」

「無茶言わないでくれ・・・・。いやそれよりエドワード、一緒に逃げよう?」

「はぁ?ふざけんなっ、中尉の標的になんのはごめんだぜ。一人で逃げやがれっ」

そう宣言すると、今度こそ躊躇いもなく男の腕を振り払って、ついでに一発げんこをお見舞いした。



カワウソは・・・・少し未練がましく、小高い丘の上からそんな二人の様子を暫し見つめていたが。


「やはり人間の感情は複雑怪奇だな。私には真似出来ない。偽者だとすぐにバレてしまう訳だ」
そう言って小さく吐息をついた。

「ずーずーしく恩返しなどといいおって」
声に振り返ると、いつの間にか長老の姿があった。

「長老・・・」

「もともとお主がランプを持ち出したから、あんなことになったんじゃろーが。しかも壊してしまいおって。その上それを恩着せがましく、どこが恩返しじゃ。さぁ、帰って冬眠のやりなおしじゃ。春になったらもっといい子を探して子孫を残して人生を謳歌すればいいじゃろ。お前はまだ若い」
そう言い諭すと、長老は山のほうへと踵を返した。

カワウソロイもそれに続きながら・・・・ふっと足を止めた。



春になったら。


そう、春になったらもう一度会いたいな。


今度は君の住む町に出かけて行こう。
そして道の真ん中で死んだふりをしてみようか。


きっと優しい君は助けてくれるだろう?

そしたらまた君に会いに行ける。

君への恩返しを口実に、君に会いに。
さぁ、今度はどんな贈り物を持っていこうか?


そんな思いを馳せながら、カワウソロイもまた長老の後に続いた。
二匹のカワウソは静かに山の奥へと姿を消して行った。




 END

**************************

カステラメンバーの皆様の素敵な小説で続いて参りました「カワウソロイの恩返し」ここに完結です。

*カステラメンバーの皆様*
無事完結出来ました。皆様お疲れ様でした~(ぱちぱちぱち)
何分力不足の私の駄文での最終話練成ですので、皆様の素敵な設定・シチュエーション・お話のイメージを壊していない事を祈るばかりです。
なかなか綺麗に纏めることが出来ませんで、大変お時間頂きました・・・申し訳ありません。でも皆様と一緒にリレーさせて頂いて、とても楽しかったです。本当に有難うございました♪

*こちらにおいで下さっている皆様*
そして、最後までこちらを読んで下さった皆様、暖かい拍手・コメントを下さった皆様・・・・・本当に有難うございました。また頂いた拍手・コメントは管理人のまいこさんのご好意で、メンバー皆に見せて頂いてます。素敵なお言葉に、元気とパワーを沢山頂きました☆ 有難うございます!!
違うお題でのリレーが始まりましたら、是非また足をお運び頂けると嬉しいです。
お待ちしております~☆

つぐみ拝

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ハボックが見えるように角度を変えてくれた籠を取り囲んで、皆暫し・・・・それを見入った。
まるまっている為一見すると毛皮の襟巻きのようにも見える。
だが確かにカワウソのように茶色の栗毛をした小さな生き物だ。

「こいつっ、そう!こんな奴だった。俺が助けたの」エドワードがそう言ったことにより皆、確信する。
やはりこれがカワウソという動物であると。

「生きてんの?こいつ」とエドワードが誰にでもなく問う。

だが返事より早く、カワウソの「ぐががががかっ」というイビキが聞こえてきて。
一同は絶句して、呆れた視線を向けた。

「寝てるみたいっすね・・・・・・」と苦笑いしながら籠を抱えたハボックが言った。

「起こしましょうか?」
そう言ってガチャリと銃を構えたホークアイの所業を、ロイは人事と感じ取られなかったのか慌てて制止する。

「中尉っ、その・・・・動物だし?もっと静かな起こし方で十分じゃないかね」

「お言葉ですが、大佐。ブラハは寝ぼすけですから、いつもこうして起こしますが?」
と、にっこり笑う彼女に一同は絶句し、同時にブラハに深く同情した。
きっと彼女のことだ、寝ぼすけでなくてもこうして起すに違いない。


しかしカワウソロイ´はこの籠の中身は「大切な君への贈り物」と言っていなかっただろうか?
仲間?の一匹が大切な贈り物???

誰もが眉をしかめて、そして暗黙の了解のように、皆カワウソロイ´のほうに視線を向けた。

この状況を説明出来るのは、彼以外には有り得ないだろう。


一人、否・・・・一匹だけ、その覗き込む輪に入っていなかったカワウソロイ´がゆっくりと近づいて来た。
その時。

「ふわあぁぁぁぁぁっ、うぅぅん、煩いのぅ」
と、いうノー天気な声がした。

皆誰もがその声と口調に聞き覚えがなく、脳裏を過ぎる一つの答え。

まさか。

信じられない面持ちで皆の視線が籠の中に注がれる。
そこには今しがたまで寝ていたカワウソが、大きくのびをしたかと思うと、すっくと四本の足で立ち上がった
のである。



「ハボック少尉、カワウソというのは喋るの?」ホークアイは、言いながら構えた銃の安全装置を外した。

「うわあぁぁぁぁぁぁっ、ちょっ、待ってくださいっ。落ち着いてくださいって」
籠を手に抱えたまま、ハボックは慌てて後ずさる。

「あの・・・・・中尉?もしかして、パニくってね?」
恐る、恐る、エドワードが声をかければ。

「あら、私は冷静よ?」
とあっさりと返ってくる返事。
だが、声は確かに落ち着いていたが、構えられた銃が冗談になってない。

「冷静なら銃は下ろし・・」
言いかけたロイに、さり気なく無言で銃口が向けられた。
黙れと言わんばかりの仕草にロイはその場で固まった。

「もう一度聞いていいかしら?カワウソは、喋るのかしら?」
はっきり言って八つ当たりのような言動だが、もう誰にも止められない。

「や!!普通は・・・・・っていうかっ。なんか段々俺、訳わかんなくなってきました!」

「取り合えず、撃ってみましょうか」と、物騒な発言に、ハボックは更に青くなる。

「まっ、ままままままま待ってくださいって!」



そのやり取りの最中。

「長老~っっ」
カワウソロイ´が籠に近づいたかと思うと、そう叫んだ。

「おお、そんな姿をしておるし一瞬わからなかったが、やはりお前だったか」
長老と呼ばれたカワウソは、そう言ってカワウソロイ´に話かけた。

「長老・・・・何故・・」

「うむ?」

「何故っ、中に入ってた魚、食べたんですかっ」
彼への贈り物だったのにっ、と付け加えて真剣な面持ちでカワウソロイ´はそう言った。

「ああ、うまかった・・・・ってお前、言うことが間違ってないか」

確かにそのカワウソは人語を話している。
その様子を見ていたエドワードは、思わず錬金術師的観点からその事態を観察する。

「キメラかなんかか?こいつ」
小さなカワウソをじっと見つめる。
しかし、何度見ても先日エドワードが助けたそれと大して見分けが付かない。

「いや、人間と人体練成したなのら、いくらカワウソベースでもサイズが小さすぎやしないかね」
ロイにそう言われれば、確かにその通りだ。
人語を話すのなら必ず人間との人体練成は必須だろう。
いくらカワウソベースでももっとサイズが大きくなる筈だ。

「わしはこう見えても何百年も生きておる。ぬしら人間の言語を真似るなど容易いこと」
ロイとエドのやり取りを聞いていたのか、カワウソは誇らしげにそう語った。

「だ、そうですよ?」ハボックがそう言ってホークアイを振り返れば。
彼女は大きな吐息を一つついて、構えていた銃をホルダーへと戻した。
その説明でこの複雑怪奇な状況に納得いった訳ではないのだが、取り合えず気持ちは落ち着いたようだ。

「で、どうしてあなたがそこに」
カワウソロイ´は、エドワードーの贈り物を食べられてしまったことにまだ憤りを感じているのか。
ちらりと空になった籠に視線を投げながら、長老へとそう問いかけた。

「だいたいお前のせいで目が冷めてじゃのぉ、腹がへってだな」

「私はあなたを起した記憶はありませんが?」

「何を言っとるか、ランプを持ち出しただろう?お陰で大騒ぎじゃ」

「ランプ・・・」
カワウソロイ´の手にあるのは、先程憲兵から取り返したランプ。
彼への贈り物にしようと、確かに長老のところから拝借したランプだった。

「お前・・・・・願ったろう?その姿にしてくれと」
そう言われてぎくりとなった。

「あれは・・・・・天から・・・声が」

 

『一つだけ、願いを叶えてあげよう』

そう、深々と雪が降り注ぐ空から確かに声がきこえた。

「だからっ!私は、一つだけの願いを口にした」

『私を人間に!あのロイ・マスタングとかいう男とそっくりの人間にしてくれっ!!』 と。



「それがランプの精の声じゃ・・・・・。本来なら願いを一つ叶えたらそのまま眠りにつく筈なんじゃが」
言いながら長老はカワウソロイ´の手にあるランプを見た。
ランプはよくよく見なければわからない程度に、僅かに発光して赤い光を放っていた。

「火をともしたか、もしくは激しい火の影響を受けたか・・・・・どちらにしろ厄介なことに暴走しておる」
 
火・・・・恐らくあの時、別荘を跡形もなく燃やした焔に影響を受けてしまったに違いない。

「そのランプは火に作用して力が膨張して、色々と厄介な事態を引き起こす・・・・・何十
 年も前にも同じようなことがあってのぉ。あの時は一族巻き込んで大騒動だったわい。
 故に持ち出し禁止とされておったものをお前が持ち出すから」

「厄介な・・・こと?」カワウソロイが聞き返せば。

「そうじゃ・・・・・例えば」
ゆったりとした口調でそう言って、長老カワウソはの~んびりと山のほうを見上げた。

「雪崩・・・・・とかな」

遠くで、ゴオォォォォォォッという地鳴りがし始めた。
誰もが聞きなれないその音にはっと顔をあげた。
山の上のほうから、確かにその音は迫ってくる。

思わず誰も皆その事態に息を飲んだ。

「言わんこっちゃない」
そう告げた長老の言葉は内容と口調が一致していない。
口調はのんびりだが、内容はとんでもないものだ。

「どうすればっ、どうすれば止められるんだよ」
長老の入った籠をゆさゆさと揺らしながら、ハボックは聞いた。

「おおっ、これあまり揺らすな」

「ハボック中尉、落ち着いて・・・・」
その事態に焦るハボックにホークアイはやんわりと制止の声をかけて遮った。
まではよかったが、次の瞬間。
しまってあった銃をさっそうと取り出して、長老の小さな頭にあてた。

「ちゅ、中尉こそっ、落ち着いてくださいっ!」
ハボックは蒼白になって止めるが、彼女は更にガチャリと安全装置を外した。

「それで?どうすれば止められるのかしら」
声音だけは冷静なまま、ホークアイは長老にそう言った。

「こっ、こっ、ここここここここここっ、壊せばいいんじゃ!、さすれば元通りじゃ!!!」
命の危険を感じて長老は、ホールドアップ状態の上擦った声でそう答えた。



「元通り・・・・?」
その言葉にカワウソロイ´が反応した。

「そうじゃ・・・・・それを壊せば元通りじゃ。何もかも、なかったことになる。お前が願う前に状態に戻る」

願う前の状態?

それでは全てがなかったことになる。
この姿になって彼と出会ったことも、そして彼への求愛行動も、恩返しも・・・・・全て?

いや。

恩返し・・・・そうだ、これこそが彼への恩返しだ。
この事態から彼を救うことこそが、自分が今出来る唯一の恩返し。


「・・・・・・わかりました」
カワウソはそう言うと黙って皆に背を向けて、地鳴りのする山を見据えた。

「お・・・・おい?」
エドワードは思わず声をかけた。

「私は人の真似は出来ても、人にはなりきれない。だから君が何故あんなに心の中で大事にしていた思いを否        定したのかは、すまないがよく理解出来ない。でもこれだけは胸を張って言える。自分の気持ちには正直であるべきだ」

「カワウソ・・・・・」

地鳴りが近くなり、雪崩が押し寄せる様が目視出来るところまで近づいてきた。
カワウソロイ´は黙ってそれを見据えている。


「私は、助けてくれた君に恩返しがしたいと思った。だから君が喜ぶことをしたかった。私の世界ではね全てはシンプルなんだよ。食事も、求愛も、全ての行動が自分の素直な欲求から始まる。私は偽者だったかもしれないけど、人間もそういうところは見習うべきだな」

「待てよ!俺、あんたの事偽者だなんて思ってない。あんたがくれた思いは本物だろ?思いには答えられないけど・・・・・・。でもそのあんたの気持ち、俺、嬉しかった」


「そうか・・・・、よかった」

カワウソは振り返ることなく、手にしていたランプを近くの岩の表面に叩き付けた!
ガシャーン!!
派手な音がしてランプが割れた。

その反動で、カワウソロイ´の背からはらりと、ハボックの黒いコートが滑り落ちた。

だが現れたのは何も着ていないカワウソロイ´ではなく。
ただの、一匹の、小さなカワウソ。


エドワードは目を見開いた。

ああ、ホントだ。
お前、あの時助けた奴だ。

お前、本当にカワウソだったんだな。


壊れたランプから光が広がる。
錬成光とはまた違った激しい閃光が辺り一面の銀世界を覆った。
その光に誰もが皆、目を覆った。


***************************

って・・・終ってないっ!?
や、あまりに長くなったので、エピローグを・・・・(汗)
ノリヲさんにそんなに長くなりませんよ、と言ったのはどこのどいつだ~いっっ!?(←私だよっっ)
はい、エピローグもあと少し調整したら、すぐにアップに参ります。
すみませっ。

つぐみ拝


 


ああ、君はカワウソなのだろう?そうしてエドワードを幸せにするためにこの私の姿を模した。
……ありがとう。君の努力のおかげで今我々は晴れて恋人同士となることができた。



言葉とともにカワウソロイ´を振り返ったロイの顔は、言い表せない妙な圧迫感を感じさせた。
先程まで確かにやんわりと優しい笑顔に見えた男の顔が、今は妙な迫力があって「怖い」と感じる。
それはカワウソロイ´が本能のような部分で感じた、つまり理屈ではなく・・・・まさに動物的勘という奴だ。


その言葉に反論など出来る筈もなく、ただただカワウソロイ´はロイと・・・・その腕に囲われたエドワード
を呆然と見つめた。

純粋に、ただ愛おしいエドワードと恋人になれたと思っていたカワウソロイ´は、およそ人間とは思えぬ程
の激しいロイの威嚇に戸惑うことしか出来ない。

 

「言いたい事はそれだけでしょうか・・・・」

その時、青ざめたカワウソの横でホークアイが銃をガチャリと鳴らした。
その音たるや心なしか、普段の音よりも大きくその場に響いて。
まるで彼女の存在を無視し、好き勝手な言葉を吐いていたことに対しての怒りの表れのようだ。


「ちゅ、中尉」
ロイの声が上擦るのは仕方がない。

それまで黙って男の詭弁を表情一つ変えずに聞いていたホークアイだったが。
表情は動かないままに、とうとうその口火を切った。

「エドワード君、騙されてはダメよ?そっちがくまだから」
この後に及んでまだ「くま」だと言いはる彼女にハボックはわかり易く肩を落とした。

「あの?中尉・・・ですからカワウソです」
だが彼女にはハボックのツッコミなどまるで聞こえていない。
いや、きっと聞こえているのにわざと「くま」で押し通すつもりなのだ。

「え゛」
それまで黙って流れに身を任せていたエドワードは、はっとなって男から離れて、思わずロイとロイ´を見比べる。
だが、確かにロイ´にはひげがあり、どう見ても今しがたまで自分の肩を抱いていた男のほうが本物に見える。

どこからどう見ても、ひげがあるほうがカワウソロイ´じゃないのか、と思ったが恐ろしくて口には出せない。

「中尉!何を言い出すんだね?先程そいつは自分のことをカワウソだと認めたじゃないかね」
あまりの馬鹿馬鹿しい指摘にロイは口調を荒げて反論する。

「彼やエドワード君は騙せても、私はそうはいきませんよ」
真顔でピシャリと言い切ってくる。


「ひげはどう説明するんだね!?」

「剃れば問題ありませんっ」

「そういう問題かね・・」

「そういう問題です」

「君っ!動物如きに軍の大佐の職務が出来ると本気で思っているのかね」

「すくなくとも、くまに拉致される国軍大佐など軍には不要ですから」
そう言い切られてロイは言葉に詰まった。

「ええ、どうせ机に座ってサインして頂くだけの単純作業ですから。むしろ淡々とこなしてくれそうですですわ ね。そんな単純作業ですら溜めてしまう無能より、よっぽと使いものになりそうです」

スッパリと言い切られて、ロイは反論の気力を失った。
既にかわされる会話の中で、カワウソロイ´のほうが「本物の大佐」でないことを前提済みだ。
そう、もはや本物がどちらかなど彼女には問題ではないのだ。
だが恐ろしいのは本物かバレバレの状態だというのに、彼女が言い切ると何故か本当にそのような気がしてくる。

くま・・・否、カワウソにまんまと拉致られた男の無能さを、まだ根に持たれているらしい。
顔色にはまったく出ていないのがまた恐ろしい。


「エドワード君はどうなのかしら?」

「え・・」
急に話をふられて、エドワードは言葉が出ない。

「あなたは・・・・・どちらが本物だと思うの?」



どっちが?


「どっちがって・・・・」
会話の中にも既に結論は出ているのに・・・・などとは、さすがのエドワードも怖くて口に出せない。
しかし何故ホークアイは今一度それを確認するのか。


”好きだよ、鋼の。……君も、だね?”


その言葉を聞いていなければ、中尉のように意地悪くカワウソがロイだと言ってやれたかもしれない。
でもロイのその言葉を聞いてしまったから・・・。

ずっと心の奥底にしまっておいた大事な思いを、思わぬところでカワウソに暴露され。
最初に否定していたのは・・・・・自分のこんな思いがロイに受け入れられる筈がないと思っていたからだ。
だが、ロイもまた自分を好きだと言ってくれた。

本当は嬉しかった。
どれほど嬉しかったことか。
伸ばされたその腕に全てを任せてしまいたかった。


でも。


振り返ると、切なげに自分を見つめるカワウソロイ´。


”だから、君への贈り物だよ。その男も私のこの姿も、全部君への恩返しに、―――君の為にあるんだよ”


わざわざ助けてやった恩返しに来てくれたカワウソロイ´。
その思いも嬉しかった・・・・。
同じ顔で、同じ声で、一生懸命自分を思ってくれたカワウソロイ´。

自分を思ってくれたその気持に本物も偽者もない。
そんな思い知って尚、どちらが本物でどちらが偽者だと・・・思いの真価を問うような真似をして隔てたくない。
それは自分が思っているのが大佐であるということとはまた別だ。


「俺は・・・・」
エドワードが口を開きかけたその時。



「ハボック少尉殿!」
ふと見れば一緒にロイ・マスタング捜索隊に参加していた憲兵が二人駆け寄って来た。

「ああ、大佐なら見つけた。先に帰って報告を」
と言い掛けて、ハボックは憲兵が抱えている妙なものに視線を奪われた。

「なんだ、それゃ?」
一人の憲兵は籠のようなものを両手に抱えて、もう一人の憲兵は・・・・西洋風のランプのようなものを手にしていた。

「あ、はい・・」と言い掛けて。
憲兵二人の視線が、はたっとロイとカワウソロイ´の方向で止まった。

「あーっ・・・・あれな、気にすんなっ。一人は大佐なんだが、もう一人はそのぉ、そっくりさんの、河合 総(かわいそう)さんだ」
ファルマンに習ったわかりにくい異国の綴りになぞらえて、わざとそう言えば。
憲兵はそれぞれに、ますます表情を険しくした。

「ハボック少尉、違うわ。私は 無能 大(むのうたい)さん と聞いたわよ」
ホークアイがこちらもやはり、異国の難しい綴りをなぞらえた言葉でそう口を挟む。

それなのに不思議と、皮肉を含めたその意味はちゃんと伝わってくるから不思議なものだ。

「「え・・・」」

あまりの返答に、憲兵二人は戸惑い・・・・困惑した視線もそのままにロイとカワウソロイ´を見比べている。
そのうち憲兵二人の視線がひげがあるカワウソロイ´のほうに止まれば、カワウソロイの表情は険しくなり。

「私がカワウソで、本物の大佐は私だ!」
と、いう理屈の分解した言葉を、声高らかに宣言した。

が、その時。
ヒユッと風が悪戯に吹いて、カワウソロイ´のコートが捲くりあがった。

コートの下は勿論の何も着ていないあられもない姿。

「ひ・・!!」

憲兵の一人は言葉にならない悲鳴をあげ、もう一人は声もあげられずに固まったまま動けないでいる。
こんな状況ではフォローのしようもないし、何よりもその姿を晒しているカワウソロイ´自身はまったくもって動じて
いない。動物に服を着る習慣がないのだから、当然の反応なのだが・・・・・顔がロイそっくりという所にやはり問
題がある。


「ああっ、と。その、ええっ・・それで?」と、さり気なく声をかける。
上官命令万歳、軍隊では絶対の権限だ。
暗黙で黙秘を要求するという器用な真似をしながら、上擦った声の憲兵の報告の先を促した。

憲兵は慌てて「はっははははは、はい」と動揺した返答をしながらも報告を続ける。
それでも憲兵の視線だけがちらちらとロイとロイ´に向けられるが、ハボックはわざと知らないふりを決め込んだ。

「先程、この上の丘を捜索しておりましたら、建物が燃えたような後がありまして・・・そこに」

「燃えた後?それは確かなの?」
燃えたという言葉を聞き逃さずに、ホークアイはすかさず問いかける。

「あ、はい。本部に確認を取りましたら、将軍閣下の別荘がこの辺りにあった事が判明しまして。何かしらの事件に巻き込まれたのではないかと」

憲兵の「何しかしらの事件」という言葉に、スーッとロイの顔色が悪くなった。

こんな山の中にあんな立派な建物がそうそういくつもあるとは思えなかった。
だとすればロイが燃やしたあれこそが将軍閣下の別荘ということになる。
将軍閣下の持ち物ともなれば、軍は正式に調査をするだろう。

「あら?お顔の色が悪いですわね?どうされました?」

「いや、その」
まさかカワウソロイ´と本物・偽者の議論になって、勢いで燃やしてしまったなど言える訳がない。

「それはテロによる報復処置などだったら大変ですね」

「テロでありますか!?」
憲兵の一人が大仰に声をあげると、ロイの顔色は更に悪くなってゆく。

「いや、その。中尉、こんな山奥にテロなど・・・・」

「いいえ、爆弾を使ったテロは彼らの専門分野です。これは念入りな調査が必要ですね」

「イや・・・・君、待ちたまえ」

「それとも、別荘が燃えた理由・・・・・よもやご存知ということはありませんね?」

そう聞かれてロイは思わずそのまま押し黙った。

すぐ後に「やっぱりくま以下だわ」ぼそりと恐ろしいセリフを小声で囁かれたが、聞こえないふりをした。


「あ・・・それで、そのこんなものが散乱しておりまして・・・何か原因がわかるのではと回収をして来ました」
と、籠を手にした憲兵は自分が抱えているものに視線を向けた。

「他にも何かあったようなのですが、無事な状態で回収出来たのはこれだけでして」
と、ランプ持ったもう一人の憲兵が付け加えた。

「あっ、それ」
見覚えのある籠とランプにエドワードが声をあげた。

「ああ、それだけは無事だったんだな・・・・・よかった。大切な君への贈り物だからね」
と、カワウソロイ´は憲兵の一人に近づくと、その手からランプを取った。
憲兵の顔がひくりと引きつったのを見かねて、ハボックは慌ててもう一人憲兵から籠を受け取ると。

「ご苦労だったな、テントに帰ってくれよ」
労いの言葉をかけるのを忘れずに、さり気なく憲兵二人をこの場から遠ざけた。


「うわっ、なんじゃこれ・・・・・水?垂れてたのかな、つららみたいに凍ってるし」
受け取った籠には、中から垂れていたであろう水がツララとなって下っている。

ハボックは冷たいだなんだと文句を言いながらも、その籠の蓋を開けた。
と、開いたまま中を覗き込んだハボックは、そのまま固まってしまた。


「なんだハボック、どうした?何が入っている?」
ロイが少しイラついた口調でそう聞いたが、ハボックはそれでも暫く何も答えなかった。

「ハボック少尉、何が?」
今度はホークアイが声をかけた。

すると、ハボックは神妙な面持ちで。
「中尉・・・・俺、推測でものを言うのはちょっとアレなんですがね。これが、カワウソって奴じゃないんでしょうか」
そう言って籠の中を皆が見れるように、低くして角度を下げた。

そこには確かに一匹のカワウソが、すやすやと丸くなって眠っていた。



    ******************************************

散々時間かかって「前編」って何っ!?
すっ、すみませっ。
長くなってしまいました。自分が長編体質だと思い知らされる瞬間(涙)
「後編」も殆ど出来上がっているのですが、まだ微調整してます。
もう少しお待ちください。

つぐみ拝

茫然と目を見開いたままエドワードはカワウソと判明したこのロイ´を見つめていた。一方本物のロイ・マスタングはここでようやく冷静さを取り戻した。
三日前、雪山で、遭難して助けてもらった…ということはつまりエドワードがこのカワウソを助けたということだ。つまり、コイツは本物のロイ・マスタングではないと自分で暴露したということではないか。
仮にも私と似た顔の奴がこんなに頭が悪くてどうする…とも思うのだが、本当にカワウソならば野生動物の脳味噌の容量しかないのだろう。仕方ないというべきか。だがそのおかげで事態を打開する光明は見えた。とロイは思う。そう、勝機は見えたのだ。風邪も熱も吹き飛ばすほどの気力がわき上がる。「でも…どうしてロイ・マスタングなのかしら?」とホークアイは問い、その答えは「エドワードが、一番大事に想っている相手だからだ」ということだった。

ここから導き出される結論などたった一つ。
エドワード・エルリックが一番大事に思っているのはこの私だ。

途端に機嫌が上昇するロイ・マスタング。にやりとした笑みまで浮かんでしまいそうになるがそこは意志の力で顔を引き締める。

ならばさっさと邪魔なものは排除し、鋼のと新婚生活に入らねば。

そうして。国家錬金術師としても国軍大佐としても有能な頭脳は一瞬にて立てた作戦を決行し始めた。

「そうか。よくわかった。つまり君のその私にそっくりな姿は鋼のへの贈り物だ…というわけだね?」
にっこりと、人好きのする…というか対女性用の笑顔を浮かべたロイ。単純極まりなく、且つエドワードとの幸せな未来を妄想…もとい描いているカワウソロイ´はそうだとばかりに首を縦に振る。
「エドワードの喜ぶ顔が見たくて、私はこの姿を…と願ったのだ!」
なのに何故エドワードは喜んではくれないのだろう?カワウソロイ´は不思議で仕方がない。この男だって私の考えは理解してくれたというのに。肝心要のエドワードが理解してくれないのはおかしいではないか…と。
「ちっ、ちげーってばっ!!た、大佐のことなんてこれっぽっちも考えてなんかねえええええっ」
なんでエドワードは笑ってくれないのだろう?望み通りのこの姿。心の底ではロイが好きだとこれでもかと叫んでいるのに口に出すのは否定する言葉ばかり。

よく、わからない。私は何か失敗してしまったのだろうか?

ほんの少しの不安がカワウソロイ´の胸に湧き上がった。周りの人間はどうなのだろうかと見回してみても、コートをくれた背の高い男はゲンナリとした表情を浮かべているだけだし。肝心のエドワードは何を言い出すんだコイツとばかりに歯を剥いて「違う違う」と繰り返す。カワウソロイ´を「大佐」と認めてくれた中尉の顔は微動だにしない。
ただ唯一カワウソロイ´に微笑みかけてくれているのはロイ・マスタングだけというこの現状。
首をかしげ、カワウソロイ´はロイを見た。笑顔を浮かべているこの男は何か知っているような気がしたからだ。縋るような瞳をついカワウソロイ´はロイに向ければ、大丈夫だよとばかりに微笑まれる。
「エドワードが喜ぶから君はその姿になった。ここまではいいね?」
こくり、と実に素直にカワウソロイ´は頷いてしまう。
「そう君が判断したのは鋼のの心の奥底に『ロイ・マスタング』への想いがあったから…これもいいかな?」
こくこくと、これまた単純に頷くカワウソロイ´。違う違うと真っ赤になりながらも首を横に振り続けるエドワード。
「ということは、だ。『エドワード』と『ロイ・マスタング』は両想い。晴れてお互いの想いが通じあい、恋人同士となれるわけだな。……ここまではいいかい?」
あくまでゆったりと優しげにロイ・マスタングは微笑み続ける。はっきり言って笑顔の大盤振る舞い、バーゲンセールの廉価品のようなその笑顔。
うっさんくさいなと思ったのはロイの部下のみだ。エドワードはそれどころではないし、カワウソは人間の裏表など知りようもない。その上、順を追って説明されるまでもなくカワウソロイ´にとってはもう既にエドワードは自分の恋人。エドワードの身内にご挨拶して、カワウソの長老にも報告して可愛い恋人とのラブラブ新婚生活を送るんだと思い込んでいる。両想いで恋人同士。その言を否定する所など全くない。なのに…エドワードは泣きそうな顔で否定し続けている。

おかしいではないか。カワウソロイ´の小さな不安は少しずつ大きくなる。どこかおかしい。よくわからないけれど、何か変ではないか。
カワウソロイ´は自問自答するのだが答えは出ない。

そしてロイは言えば。カワウソロイ´の動揺の隙をついてエドワードの腕を取り、あっさりと自分の腕の中へと引き寄せた。

「嬉しいよ、鋼の。……私もね、君のことがずっと好きだった……」
甘く低く。痺れるほどの美声でロイはエドワードの耳元に囁きかける。カワウソもハボックも中尉もまるでそこにいないかのようにエドワードを抱きしめて、髪を撫ぜる。
「本当は君の旅が終わってから告げるつもりだった。それまでは…待つ、つもりだったのだよ?だが…」
ロイはそっと、壊れモノに触れるかのような手つきでエドワードの頬に手を添えた。そうしてエドワードのこれでもかと見開かれた金の瞳をじっとその漆黒で見つめ……。
「君がこれほどまでに私のことを想ってくれていると判れば…躊躇などしていられないだろう?この私の想いを伏せる必要など無くなった」
ふっと、自嘲するような吐息を洩らして。ロイは駄目押しとばかりに囁きかける。
「好きだよ、鋼の。……君も、だね?」
漆黒の瞳に映るのはエドワードの驚いた表情のみ。だが、その顔もゆっくりとこわばりと解いていった。
「たい……さ…」

エドワードのその両腕が、無意識のうちにロイの背に回された。指に込められた力がギュッとロイの軍服を掴む。ゆっくりとお互いの顔が近づいていく。そうして…唇が触れ合うその寸前。

カワウソロイ´は辺りに劈くような大声を出した。
「わ、私が『ロイ』ではないかっ!エドワードの恋人はこの私だ…っ!」

けれど、ロイはエドワードを抱きしめたままきっぱりと告げたのだ。

「ああ、君はカワウソなのだろう?そうしてエドワードを幸せにするためにこの私の姿を模した。……ありがとう。君の努力のおかげで今我々は晴れて恋人同士となることができた」

先ほどまでの優しげなロイの笑顔。それが悪魔のようなにやりとした笑みに変化したのをカワウソロイ´は茫然と見つめてしまった。



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そろそろ大佐に活躍してもらわないとカワウソとエドワードがくっついちゃうなー…と思ったら黒ロイ光臨。 
あ、あれ…?
ノリヲでした。

第10話

テントに向かって歩いている5人(?)のうち3人はいたたまれなかった。

まずはエドワード。

カワウソなのかロイ´なのか、もうどうでもいいやとさえ思うけど、そこはやはり錬金術師。
なぜ、こんな事になっているのか、分からないというのが我慢できない。
しかも、天然毛皮に身を包んで温かいのは、腕を組んで歩いているロイ´から貰ったもの。
おかげで、ロイ´はすっぽんぽんで、それがエドワードには申し訳けなくて、でもその姿が情けなくてしかも中尉やハボック少尉にまで見られてしまって恥ずかしくて。

なのに、最初思いっきり本人だと間違えて……色々あってとってもイタタマレナイのだ。

一方ロイだっていたたまれない。

こんなヒゲをつけたふざけた妖怪変化に間違われた。しかも最初は本気でだ。
それは中尉に限らず愛しのエドワードでさえ、ロイ・マスタング本人だと思ったのだから……その上、二人仲良く腕組をして歩いている。
凍死防止の為だと分かってはても。

あぁ、いたたまれない。

そして、カワウソロイは―――ルンルンだった。

裸で寒いけど、「お、俺と腕を組んで歩けば少しはましだろっ!?」と、可愛いあの子が自分から腕を組んでくれたのだ。
そして、大好きな金色の子供の名前が「エドワード」だと、中尉と呼ばれる女性がそう呼んでいたので知ることができた。

そう、恋人同士になるのだ。名前をちゃんと知っておかないといけない。私は、まあロイで良い。
うんうん、これで第2段階もクリアーだ。
あとはエドワードの身内に挨拶をして、そうそう!春になったら長老へご挨拶に伺わねばっ!

カワウソロイ、身も心もぽっこぽこ。

3人目、最後にいたたまれなかったのは、ジャン・ハボック少尉だ。

上司にそっくりな、でもすっぽんぽんで変てこなロイ´を見るだけで、体中の力が抜けていく。
そして、隣を歩くホークアイ中尉の口元が、微かに上がっているのをハボック少尉は見逃さなかった。
ついでに、本物のロイ・マスタングの機嫌が地平線を這っているのも感じた。

あ~機嫌最悪っすね。まあ、大将があんなに【あれ】にくっ付いているんじゃなぁ。


せめて上司の機嫌だけでも、少しでも浮上させないとあまりにハボックだってイタタマレナイ。
浮上させる為には、まずロイ´からエドワードを離すことが先決だ。

「あ~その、そこロイ´さん?」
「ダッシュではないっロイだ!」
「バカな事を言うなっロイは私だ!」

ただでさえ頭が上がらないのに、その同じ顔で同じ声で同時に怒鳴られた。でもヒゲ付き。

ははは…迫力も情けなさも2倍っすよ……。

「えっと、あのぉ~裸はまずいでしょ、これどうぞ」

自分が羽織っていたコートをロイ´に差し出す。

「あ、ああ…すまない」

こ、これは!とうとう部下まで私を本物と認めたという証なのか!?

カワウソロイ、一歩前。ってな感じだ。
しかも。

「あら、まあさすが良くお似合いですわ、大佐」

と、ホークアイ中尉が満面の笑顔で【大佐】と言った。

「もちろんだとも!」
カワウソロイ、腰に両手をあて得意満々だ。

一連の言動で慌てたのは本物のロイで。

「中尉!大佐は私だっ!ハボックッそんな奴にコートなど貸すな!」
「ひっすすすすすんませんっ!」

せっかくロイの為に、ロイ´をエドワードから離そうと画策したのにハボックは理不尽にも怒られた。
でも。
「あら…コートを羽織ると益々見分けがつかないですね。まあ困ったわ…どちらが本物の大佐か全然分からないわ。本当に困ったわね」
棒読みな、中尉の言葉がとてもとてもわざとらしい。

全然困っていないだろ。

ロイもハボックも心の中で突っ込んだ。そんな直接声に出して言えない情けない二人をきれいに無視をして、

「でも…どうしてロイ・マスタングなのかしら?」

ねえ。とホークアイはエドワードに話題を振った。

「えっ!? え~と…なんで、かな??」

かな??と、エドワードはカワウソロイに話題を振る。


「君が、一番大事に想っている相手だからだろ」

カワウソロイ、メガトン級の爆弾発言をさっくりと投下。


「なっ!それは本当かねっ!」
「まあ、やっぱりね」
「えぇーっ!まじっすか!」
「ちげーっ!いい加減な事いうなーっ!」

カワウソロイは、どうして皆が騒いでいるのか分からない。
しかも、愛しいエドワードに至っては涙目になって否定している。

おかしい……間違ってはいないはずなのに、何故この子は泣いているんだ?


「だって、君の心の奥が見えたから。そこに、この男がいたから…私は願ったんだ」

ロイ・マスタングにしてくれと。
君の喜ぶ顔が見たくて。
なのに、どうして君は喜んでくれないんだ?

「いっ、いいかげんな事いうなっ!いつどこでだよっ!言ってみろ!!」
「三日前、雪山で、遭難して助けてもらった時だが」
「へっ!?」

怒りと恥ずかしさで真っ赤だったエドワードの顔が、?マークで一杯だ。

「……え~と、もしかして…まさか、あの時のイタチ???」
「カワウソだ。いい加減間違いに気づいてくれたまえよ」
「えーっ!嘘!なんで、どうしてっ!」

金色の大きな瞳がさらに大きくなって、カワウソロイをこれでもかっ!と言うほど見つめる。

あの時のイタチ、ではなくて冬眠しそこねて死に掛けていたカワウソが、このロイ´!?
わけの分からない荷物をたくさん持ってきたロイ´が、あの時のカワウソ!?

「大佐以外の変な荷物は何なんだよ!」
「君への贈り物だが」
「じゃあ、なんで大佐が入っていたんだよ!」
「だから、君への贈り物だよ。その男も私のこの姿も、全部君への恩返しに、―――君の為にあるんだよ」

そう言って微笑んだロイ´の表情は、この上もなく優しいものだった。

………裸コートな姿でイタタマレナイけれど。




遅くなりました~。ついでに今の時間も、須田にしては珍しく遅いです(汗
エドたん、あの時のカワウソだって気が付きましたよ!恩返しだって事も気が付いた(はず)!
そして、エドたんの恋心・・・いきなり暴露されちゃいました(汗
こんな感じになってしまいましたYO!「友よっ後は頼んだぞ」←☆聖矢風に

まいこ


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ILLUSTRATION BY nyao