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トントン・・・・・。
遠くで、何か音がした。
「あれ?」
うっかり居眠りをしてしまったのだろうか。
気が付くとソファに横になっていた。
そうだ自分は酷い吹雪にこの場所に足止めをくっていたのだった。
見れば暖炉の火が小さくなってきている、どうりで寒い筈だ。
ぞくりとした寒気に身体を震わせながら、エドワードはソファから起き上がった。
トントンと再び聞こえたノックの音。
慌ててドアへと近づいた。
「え~と…どなた?」
「私だ」
えっ!?
聞き間違えようのない、甘いテノールの声が外からする。
「うっ嘘だろっ!!な、なんで大佐がここに!?」
「嘘なものか、早くここを開けてくれ」
ガチャリ。
ドアを開けると。
そこにはいつもの青い軍服に黒いコートを羽織ったロイ・マスタングの姿があった。
あ・・・・れ?
そんな大佐の姿に何か、妙な違和感が頭を通り過ぎて、エドワードは暫し動けなかった。
そして何故か自分の視線は大佐の足元に落ちた。
勿論そこにはなにもある筈もなく・・・・ただの雪の地面である。
「あんたさ・・・・手ぶら?」思わず口に出たのは、自分でも思わぬ台詞だった。
「は?」
ロイは間の抜けた声でエドワードの言葉に固まった。
「や、その何か持っ来てたんじゃないかって・・」
「すまないが君を助ける為にやって来たのであって、お土産などないぞ?」
「ああ、いやそんなつもりじゃ・・・」
なんだろう、心に残る妙な違和感。
何か、何か男が持ってきていたような気がしたのだ。
お土産を?いや、何か微妙な部分が違っているような気がする。
「なんか、前にもこんなことあった・・・・ような?」
「そう、かな?」
「っぁ・・!」
突然ロイの背後を指差して、エドワードが声をあげた。
「どうした!?」
「今、なんか・・・・あんたの後ろを小さい茶色いのが横切った!」
そう言えば、ロイは慌てて振り返ったが。
既にそこには何もいない。
「キツネか何かじゃないのかね?」
「カワウソ」
「え?」
「や、なんか。今急にそんなふうに思って。三日前に助けたんだ、多分今見たような奴。あれ、カワウソだったんじゃねーかって・・・遭難しかけてたみたいでさ、あれからずっと心配で・・」
言いかけのままで、いきなりロイに抱きすくめられた。
「そんなものの心配はもういいよ、君だってここで遭難しかけていたろう?」
「っ!」
エドワードは突然の抱擁に戸惑い、動揺のあまり動けなくなってしまった。
「心配したよ、無事で・・・・よかった」
聞いたこともないようなロイの真剣な声音。
この男の声をこんなまじかで聞いたのは初めてで。
心臓は破裂しそうに跳ね上がり、煩いくらいにドクンドクンと波打っている。
身体中の熱という熱が、全部顔に集まったのではないかというぐらい・・・・顔が熱い。
「なっ・・・・なっ・・」
なにしやがる!っと、思わず振り払って殴り飛ばしてやろうと上がった手。
その時。
”自分の気持に正直に”
どこからともなく、声が聞こえた。
確かに、そう聞こえた。
上がりかけていた手から力が抜け、行き場を失って戸惑う。
「エドワード・・・・・」
低いテノールで初めて名を呼ばれれば、心臓が止まりそうになって息を飲んだ。
「大佐・・・・」
宙に浮いたままだったその手は、名を呼ばれることにより行き先を見つけ。
そのまま男の背にゆっくりと回される。
が。
ズキューン!!!!
という銃声がなった。
雪が降りしきる音の少ない世界に、それは静かな山肌を伝って反響してきた。
開け放たれたままのドアから思わず二人は外を見た。
そして暫しの沈黙ののち二人とも・・・・・何も言わずにお互いの顔を見やった。
どうやら同じ結論に至っているのは間違いないらしい。
「今の、中尉の威嚇射撃・・・・だよな?」と、エドワードが冷たい視線を投げれば。
「まずいな、もう追っ手が」と言いながらさり気なくロイは視線を逸らす。
「追っ手!?あんたっ、また仕事さぼってきたのかっ」
「君が心配で仕事が手につかなかったんだっ!」
「だからって中尉に無断で来たのかよっ!ちゃんと仕事してから来いっ」
「無茶言わないでくれ・・・・。いやそれよりエドワード、一緒に逃げよう?」
「はぁ?ふざけんなっ、中尉の標的になんのはごめんだぜ。一人で逃げやがれっ」
そう宣言すると、今度こそ躊躇いもなく男の腕を振り払って、ついでに一発げんこをお見舞いした。
カワウソは・・・・少し未練がましく、小高い丘の上からそんな二人の様子を暫し見つめていたが。
「やはり人間の感情は複雑怪奇だな。私には真似出来ない。偽者だとすぐにバレてしまう訳だ」
そう言って小さく吐息をついた。
「ずーずーしく恩返しなどといいおって」
声に振り返ると、いつの間にか長老の姿があった。
「長老・・・」
「もともとお主がランプを持ち出したから、あんなことになったんじゃろーが。しかも壊してしまいおって。その上それを恩着せがましく、どこが恩返しじゃ。さぁ、帰って冬眠のやりなおしじゃ。春になったらもっといい子を探して子孫を残して人生を謳歌すればいいじゃろ。お前はまだ若い」
そう言い諭すと、長老は山のほうへと踵を返した。
カワウソロイもそれに続きながら・・・・ふっと足を止めた。
春になったら。
そう、春になったらもう一度会いたいな。
今度は君の住む町に出かけて行こう。
そして道の真ん中で死んだふりをしてみようか。
きっと優しい君は助けてくれるだろう?
そしたらまた君に会いに行ける。
君への恩返しを口実に、君に会いに。
さぁ、今度はどんな贈り物を持っていこうか?
そんな思いを馳せながら、カワウソロイもまた長老の後に続いた。
二匹のカワウソは静かに山の奥へと姿を消して行った。
END
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カステラメンバーの皆様の素敵な小説で続いて参りました「カワウソロイの恩返し」ここに完結です。
*カステラメンバーの皆様*
無事完結出来ました。皆様お疲れ様でした~(ぱちぱちぱち)
何分力不足の私の駄文での最終話練成ですので、皆様の素敵な設定・シチュエーション・お話のイメージを壊していない事を祈るばかりです。
なかなか綺麗に纏めることが出来ませんで、大変お時間頂きました・・・申し訳ありません。でも皆様と一緒にリレーさせて頂いて、とても楽しかったです。本当に有難うございました♪
*こちらにおいで下さっている皆様*
そして、最後までこちらを読んで下さった皆様、暖かい拍手・コメントを下さった皆様・・・・・本当に有難うございました。また頂いた拍手・コメントは管理人のまいこさんのご好意で、メンバー皆に見せて頂いてます。素敵なお言葉に、元気とパワーを沢山頂きました☆ 有難うございます!!
違うお題でのリレーが始まりましたら、是非また足をお運び頂けると嬉しいです。
お待ちしております~☆
つぐみ拝
カワウソ!男だよっ!男だよカワウソっ!!
アイテムもすべて回収して、しかも無理のない展開!
ああ、でもやはりほんのり切ないのが胸きゅんですYO~!
アンカーお疲れ様でしたvv
有難うございまーすっっ(歓喜っ)
カワウソロイ、男になれたようでよかったです(笑)や、実はアイティム一個だけ回収しきれてないのがあるんですよ(苦笑)ナイショですけど←ばらしてるって。なんて言ってるとあっちもこっちもぼろぼろと出てきそうなので、見つけても「ふふふ、あれか」とココロの中で突っ込んでやってください(まてっ)
展開に無理はなかったでしょうか?そう言って頂けると、あの顰蹙の長さが報われます~(なんか違っ)はい、ラストはほんのり切ない感じで☆
皆様のイメージ壊してないことを祈りながら練成しました。でもリレーって本当に楽しいですね☆有難うございました。
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ノリヲさん
はいっ、有難うございますっ。
ええ、ホントですね。皆さん別々のマイ設定を書き足しながらのリレーでしたから、収拾がつくのかかなり不安でしたが。ラストコールをかけた辺りから皆様が最終章に向けて、書きやすくしてくださったので・・・・最後は本当に綺麗に纏めやすかったです。ええ、これも皆様のお力添えあって出来たことですよ。本当にお疲れ様でした。
カワウソロイ、これで一皮むけたでしょうか(苦笑)もてもてを踏み倒してでも、エドに会いに行きそうですね。リレー、楽しかったです☆有難うございました。
………ズキューン!!!
・・・って、 そ う 来 た か っ!!!
さすがです!!(やっぱ、一生ついていきます。)
アンカー、お疲れ様です!
皆様、お疲れ様です!
作家の皆様にも、読者の皆様にも、色々想像をふくらませていただけたら、と思い、描いたスタートイラスト。
全17編、お楽しみいただけましたら幸いです。
「if&デジャヴ」エピローグですね、いいなぁ…このラスト。
何もかもなかったことになったとしても。
「イタチ」ではなくて「カワウソ」だった、というところは、ちゃんとエドの心に存在するのですね。
そして、春になって町へおりて死んだフリをしたら、きっと「アラ?こんなところにオコジョが…」と、拾ってくれるのは、中尉に間違いないと思います。
(逃げてー!byブラハ。)
それでもやっぱりついていくのね~。
いえいえ。
さとさんも素敵絵練成、お疲れ様☆
「if&デジャヴ」エピローグだなんて、そんな素敵なものじゃないですけど。
でも何もかも本当に元通りなんて、ちょっと悲しくて。
少しだけ・・・・残っててもいいかなと。
理屈や記憶じやくて・・・それ以外にも心に残るものってあるのかなと思いたいです。
でも「オコショ」が来ましたかっ。爆笑っ。
中尉なら言いかねないところが笑えます☆
拾ってくれるならいいけど、「アラ、今何か踏んだんしら」って車のアクセル全開してそうで怖い~っっ。
さとさん・・・沢山の丁寧なコメント、本当に有難うございました♪(ぎゅっ)