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-------------●ここは鋼の錬金術師「ロイ×エドSSリレー企画」の二次創作サイトです♪●-------------※全ての画像・テキストの無断掲載持ち帰りはしないでください・初めての方は「about」をお読みください※since07/10/25
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それは、雪に変わりそうな冷たい雨の降る夜。しんしんと心の奥底まで凍えてしまいそうな、雨音だけが静かに聞こえる寒い夜。
「よ、大佐。…あ、今は少将だっけ」
「ああ。まあそろそろその上のポストが空くが。君も五体満足になったようだね」
「おう、全部取り戻したよ。たった一つを除いて、な」
 傘も差さず、軍服姿の黒髪の男と、夜目にも鮮やかな金髪の少年が向かい合って話していた。
「ほう、何だね?」
男は柔らかに問いかけた。口元には、どこか確信めいた微かな笑み。
「いけすかねー奴で、すっげー女ったらしで、腹黒いし雨の日無能で…でもホントはすげー優しくて不器用で、だからちょっと優柔不断だったりもするおっさん」
「おっさんとは失敬な。」
「オレからすりゃ充分おっさんだっつの。今33だろうが、アンタ」
からからと少年は明るく笑う。髪にも負けない、眩しいほどの笑みだ。
「あ、そういや今アンタ無能モードじゃん、やばくねぇ?」
「昔の私と一緒にするな、雨の日だってもう大丈夫だ。いつだって大切な人を守れるようにしている」
ハッキリと言い切ると、男はすっと腕を広げた。目の前にいる、金色の少年に向かって。
「君がまだ私を欲しいと思っていてくれるなら…この胸はまだ誰のものでもない。たった一人のために空けているから…おいで」
柔らかく、でも確かな強さのある声が夜道に響いた。少年は…笑みを浮かべたまま、ぼろぼろと泣き出した。今までの強がり、不安、孤独、寂しさ全てが溶け出した涙は、冷たい雨に流れていく。
「バカやろ…相変わらずクセーんだって…」
泣いていることを悟られまいと吐き捨てながらも、少年は広げられた男の腕の中に飛び込んでいく。男はすぐさまそれを抱きしめた。強く強く、少年の背がしなるほどに。少年は―満ち足りたように微笑み、男の背に腕を伸ばした。
「また、始めよう。ここから。今までの寂しさはこの雨に流して」
「うん…」
 冷たい雨はやむことなく降り続ける。気温はますます下がり、このままいくと霙になりそうだ。それでももう、寒くはない。欲しかったものが側に在るから。確かな優しいぬくもりに包まれているから。離れていた今までの時間は、困難に立ち向かい、壁を超えるためのしなやかな強さとすべてを受け入れられる広い心―それを手に入れるための時間だったのだから。
 しとしと降る冷たい雨は、新たなはじまりのための恵みの雨。一度切れた絆を再び結び付け、さらに強くする、天からの贈り物なのだった。

そう、それは2人の心がより強くなるように、より暖めあえるようにと降る、優しい優しいコールド・レイン―。

                        End.
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自信なんてない。でも覚悟はある。強がりじゃなくてそれはオレのホントの気持ち。
決めるのはオレ。
流されない。
待って待って待ち続けて、雨に濡れて立ち竦むなんて。そんなオレはもう要らない。
だから、決める自分で。自分自身で。

オレは大佐と別れる。弱いオレとは決別する。
後悔はしない。
真っ直ぐにオレは走る。だから大佐。アンタも迷うな。オレが好きになったのは迷ってるようなアンタじゃない。
オレのこと要らないんなら捨てろ。
欲しいなら手を伸ばせ。
欲しいのに、手を伸ばしたいのに、なのにしない出来ないなんて言い訳みたいなこともう言うな。お互いに離れた方が幸せなんてそんな生ぬるいこともう聞きたくない。
そんなの優しさなんかじゃない。
そんなの弱いって言うんだぜ。

だから、ここでオレ達は別れる。決別する。

だけど大佐。オレは真っ直ぐに進むから、別れてもオレは好きだから。だから、いつかきっと。アンタがオレのこと見たくなくても手を伸ばしたくなくても、それでもオレを欲しくなるような、そういうオレにいつかなる。
今はまだオレも弱い。大佐もきっと。
だけどオレは諦めないから。強くなる。誰よりも真っ直ぐに駆ける。
目を逸らそうとしても反らせない。太陽のようなオレになる。雨はもうオレは要らない。オレが雨雲なんか蹴散らしてそうしてこの場所を照らすんだ。そしていつかオレはアンタにたどり着く。


ロイはエドワードを見た。
背を伸ばして歩いていくその後ろ姿。言葉にはしなかったエドワードの想いがそこにはあった。それが無言のままに伝わってくる。ロイの勝手な思い込みかもしれない。幻想かもしれない。けれど。
ロイは去っていくエドワードのその背中を、ただじっと見つめていた。
その背が消えて見えなくなるまで。身じろぎもせずに。


そして、ロイも。一歩を歩み出す。
立ち止まっているわけにはいかない。だから。

今はエドワードに語る言葉をロイは持たない。けれど弱いままの心ではいられない。そんな心のままでいたくもない。だから一歩を踏み出すのだ。

別れてそして。その後を。
雨などもう決して降らせないように。
そしていつか、輝く太陽に手を伸ばして、それを手に入れられるほどの。そんな強さを掴むのだ。



続く








前回書いたのは5月ですね。続き書きにくいところでぶった切っていたようですのでちょろっと付け足してみた。

ポエム…かこれ……(赤面)

続きはいかようにでも。数年後とかでもいいかと……。



ではまた。ノリヲ。



エドワードは無言だった。身体はびくりと震えた。あの雨の日のことをもう一度、とロイから告げられて心が掴まれたように震えてしまう。
何を言うつもりなのか。あの雨の夜、言われるはずだった言葉をここではっきりと告げられるのかもしれない。ロイの腕の中で、エドワードはぎゅっと緋色のドレスを握りしめる。
あの夜、サヨナラを告げられることはわかっていた。言葉に出して言われてはいないけれど、だけどわかったいた。雨の中立ち尽くした自分。ロイが早く来てそして冷たい身体を温めてくれるのを本当は期待していた。だけど、ロイは来なかった。自分もそのまま立ち尽くしていた。冷たい雨は衣服を濡らし、そして重く肌に張り付いた。けれど、立ち止まったままではいられない。
雨の中立ち尽くしていたところで未来は開けない。
立って歩いてこの手に掴む。未来を自分の望みを。どうしたいのか、それは自分で決めること。
動け、自分の足で。掴め、自らの手で。
ぎゅっと握りしめていた手をほどいて、エドワードはロイを見た。
漆黒の瞳に浮かぶのは真剣な表情。何かを、決めたその強さがそこにあった。
「……下ろしてくれねえか、大佐」
腕の中に抱えられて、そしてそこでロイの言葉を待つなんて。それは違うとエドワードは思った。
未来をと望むなら、うずくまって助けを待つのではなく。
いつだって自らの手と足で掴みとれ。立って歩いて、前へ進む。何かを期待して待つことなどしない。弱い心などもういらない。
「アンタも、オレに話あるんだろうけど、オレだってある。あの雨の日をもう一度なんて冗談じゃねえ」
睨むような強さでロイを見つめ、そしてエドワードは自分の足で立った。
くいと、顔を上げる。俯きなどぜずにしっかりと。
「エド?」
もう待たない。自分の足で歩き出す。
「オレは、わかってたんだ。あの日、アンタに何を言われるかなんて。それが痛くて怖くてただ待った。でもアンタは来なかった。それを繰り返す気なんかねえって言ってる。だから、オレからアンタに言う。……オレ達、もう別れよう。オレはアンタの恋人でいることを、今、ここでもうやめる」
きっぱりと言い放つ。震えなど抑えつけて。
別れる。それがエドワードの結論だった。

別れようオレ達。
告げられた言葉がロイの心に突き刺さる。
こんな言葉を私はエドワードに告げようとしていたのだ。
後悔などしても遅かった。この事態は自分の弱さが招いたこと。ロイはエドワードから視線も外せずにただ、痛みとともにエドワードを見た。
冷たい雨にうたれながらただ自分を待っていたくれたエドワード。ドレスを着せられて人形のように眠らされていた。離れたほうがいいと思ったのだ。共に歩めばただ苦しめるだけだと思った。けれどそれは違ったのだ。
告げられて、わかる。
別れがどれほど痛みを伴うものか。魂をえぐり取られるに等しかった。
――そうやっていつまでも逃げているがいいわ、ロイ・マスタング。情けない男ね。この子を心の底から捨てることもできず、ただ、相手の幸せのために身を引いたなんて似非ロマンチシズムに浸るのがお似合いよ。『別れても愛しているのは君だけだ』なんて自分に酔ったセリフでも言うつもりだったんでしょ?笑わせないで。そんなのは捨てる方の勝手な言い分だわ。身勝手な理屈であなたの都合に振り廻されたほうがどれほど傷つくと思うの?それを受け止めることもできやしないクセに。
フィオレッナから突きつけられた容赦のない言葉が蘇る。彼女は手を伸ばした。手段はどうあれ欲しいものが欲しいと。そして彼女の目的に手が届かなくとも足掻いたのだ。フィオレッナは彼女の持てる力をすべて使った。甘い、と言われようが結果的に負けたとしても。そしてこの場は身を引いた。けれど彼女は奮起するだろう。欲しいものにいつか再び手を伸ばし、そして必ず手中に収める。その強さがあった。相手のために別れようなどというそんな弱さは彼女にはない。
これが、結果だ。自らの弱さが招いたことだ。
ロイはただ耐えるしかなかった。どんな結論をエドワードが選んだとしても、あのままコルネオ家のおもちゃなどにはさせやしない。そう決意して自身をオークションにかけるという暴挙に及んだ。けれど自分は道をまちがえたのだ。
共に、手に入れることを考えるべきだったのに。別れを、エドワードから告げられて、それがどんなに悲痛なものかようやくわかった。
「こんな情けない男は……君の方から見捨てられても仕方がないな……。だが、エドワード私は……」
許してくれるのならやり直したい。別れなど選択するのではなく共に在る未来を。そんな言葉を告げるのは実に調子の良いことだとわかっている。それでも、別れなど告げたくない。愛しているのだ。みっともないほどに、どうしようも無いほどに。
けれどエドワードは首を横に振る。
「もう止める。オレは立ち尽くすのも立ち止まるのも性に合わねえ。アンタとはいったん別れる。これはオレの決定。『だけど』も『だが』も要らねえよ。アンタから別れよなんて言われるようなオレはもう要らねえんだ」
「エドワード……私は」
「それからアンタの情けねえ顔も見たくない」
きっぱりと告げられた。迷いなど欠片も無い瞳で。
ロイは強く奥歯を噛みしめる。
別れる。
これがエドワードの出した結論なのだ。
これが、自分の心の弱さが招いた結末なのだ。
受け止めるしか、ないのだろうか。だが……。
「わかった…・・・だが、一つだけ覚えていてほしい。私は君が好きだ。愛している……。ずっと一生この想いは変わらない」
なんとみっともない言葉だろうかとロイは思った。
きっぱりと別れると告げてきたエドワード。あの雨の日にそう告げるつもりで呼び出して、けれど言えずにただ雨に打たれていた。その挙句にこんなセリフだ。愛しているというそんな言葉が今更エドワードの心に響くわけはない。けれど……。
悔恨が重かった。けれどただ、立ち尽くしてエドワードからの断罪を待つだけしかできなかった。そんな自分にロイは苦しさしか覚えることはできなかった。

奥歯を噛みしめて、それでも愛していると告げたきたロイを、エドワードはじっと見た。
これが、オレの結論だ。
オレ達は一度終わらせる。
俯くのも立ち止まるのも、もうしない。オレは前に進む。
エドワードは俯かなかった。真っ直ぐにロイを見上げ続けた。
「聞けよ大佐。オレはな、アンタが好きだ。すげえ好きでどうしようもなくなって。…・…アンタから別れ告げられるの怖かったよ。だからあの雨ん中ただ待った。でもそんなのオレじゃねえよな。アンタが好きになってくれたのはあんなオレじゃねえんだろ。だから情けないアンタも情けないオレももうここで終わりにしよう」
「わか……った……」
真っ直ぐに見続ける。強く強く、射抜くように。
「だけどオレはアンタが好きだ。今も、な。どうしようもねえくらい好きだよ。だから、オレは前に進む。ここで別れてそんで……。アンタがもう一回オレに惚れるくらいのすげえ男になる。そんでそれからアンタ口説き落としてみせっから。覚悟して待っていやがれ」
俯かない。
冷たい雨などはもういらない。
手を伸ばして掴んでみせる。太陽を、照りづづけられる強さを。

「エドワード……」
驚きに見開かれた漆黒の瞳。
足掻いてそして去ったフィオレッナ

エドワードは胸を張って、そしてロイへと笑って見せた。まるで太陽のような輝きがそこにはあった。







お久しぶりです続きです。ノリヲでした。 続きよろしくですよ~。

 

コールドレイン23話

 

「基本的に、ご婦人と交わした約束は忘れない主義ですが……さあ、困りましたね。どんなお約束を貴女としましたか?」

 

ピキッと、フィオレッナのコメカミに青筋が刻まれる音が、エドワードには聞こえたような気がした。

背後にいるフィオレッナの表情を見ることは適わないが、それでも気配が尋常ではないのは分かる。

 

お、怒ってる?…よな、それも思いっきり。って、こいつ怒らせてどうするんだよ、大佐っ!

 

「あなた、今どういう状況か分かっていて、そのような事をおっしゃっているの?」

 

ひーっ、声が地を這っているよ~っ!!ついでに、俺のコメカミに当てられていた銃口が食い込むようにグリグリと押されているんですけど?!

エドワードの心の声は騒がしい。

 

ロイの言葉は明らかにフィオレッナの逆鱗に触れている。会場にいるすべての者は、ロイの失態だと思った。

いや、アームストロング少将と、ファルザーノはそうは思っていないようだが。

 

「これは、面白い見物だな」

「確かに…なかなかの趣向ですな」

 

二人揃って、実に愉快そうだ。

 

「あんたら不謹慎だろーっ!」

「うるさい。二度も捕まりおって、お前はそこで反省していろ」

「ははは、エドワード君。何なら私の胸にくるかね」

「………ヤナこった」

 

ダンッ!フィオレッナが地団駄を踏むように、床を鳴らした。

 

「いい加減にしてくださらない!エドワード、あなたまで何漫才に参加しているの?!このまま撃ったって、私は構わないのよ」

「あ~、それは勘弁」

「なら、大人しくしていなさいっ!」

 

もう一度、銃口をエドワードのコメカミに強く押し当てた瞬間。

 

―――大人しくするのは貴女の方ですよ。

 

甘いはずのテノールの声が、冷たい氷のような響きを放った。

フィオレッナがロイへと視線を向けるより早く、赤い一筋の閃光が彼女へと走る。

 

「なっ……」

 

何なの!と声にする間もなく、一筋の焔がフィオレッナの右頬をかすめたのだ。その瞬間、怯んだ彼女の腕からエドワードは自力で脱出をする。

 

「あっ、危ねーだろ!俺まで燃やすつもりか、クソ大佐っ!!」

 

うがーっ!とエドワードは吠えるが、この状況下において場違いなほど和んでいる御方が二人いる。

 

「良い判断だ」

「ははは、貴女が好みそうですな」

 

面白くないのはフィオレッナだ。まさか、エドワードを盾にしている自分にロイが焔を放つなんて思いも寄らないことだ。

 

「いい加減に……っ」

 

だが、言葉はそれ以上続かなかった。

 

不覚にも、自分に向けられた漆黒の眼差しに射すくめられたのだ。しかも、発火布をした指先が、一寸の狂いもなくフィオレッナに合わされている。

 

「……それが、貴方の答え。意外ですわ、ロイ・マスタング大佐」

「残念ながら、答えは最初から決まっていましたよ」

 

そう、貴女が<彼>を人形にした時点で、ね。

 

「だからと言って、か弱い女性に対して……この仕打ちはどうかと思うわ」

 

軽くサイドの髪に触れると、美しい銀色の髪が黒く焦げていた。ほんの数ミリずれていたら……。

ギリリッと、唇を噛む。

自慢の、しかも顔に向けられた焔。

 

だが、そんなフィオレッナにロイは同情の眼差しなど向けない。変わらず発火布を翳したまま言い放つ。

 

「私は、貴女をか弱い女性などとは思ってはいませんよ」

 

焔を放つに等しい<敵>と認識している、と。漆黒の瞳をフィオレッナへと突き刺す。

 

再び焔を繰り出しそうな緊張感に、会場内は固唾を呑んで誰も身動きすらできない。そんな緊迫した中、ファルザーノの豪快な笑い声が飛んだ。

 

「はははっ!フィオレッナ、お前の負けだ。マスタング君はお前の夫にはなる気はないようだ、諦めなさい」

「お父様っ!」

「フィオ、完全に振られたな。それとファルザーノ、そいつはお前の娘婿にもならない、という事だ」

 

オリヴィエ・アームストロング少将の凛とした声が通る。その声はどこか楽しげで、ファルザーノも世間話をするように会話を続けた。

 

「ま、そういう事ですな。では、どなたか他に良い婿殿はいませんかな?少将殿」

「まずは、あのじゃじゃ馬をどうにかしないとどうにもならん」

「ははは、貴女様にそう言われては立つ瀬がないですな」

 

和んでんじゃねーよ。フィオレッナから安全圏まで離れていたエドワードは、げんなりしながら思った。というか突っ込まずにはいられなかった。

そんなエドワードに、ロイが近づいてくる。フィオレッナへの攻撃態勢は、父親であるファルザーノの言葉によって既に解かれていた。

 

これ以上は必要ない。

それは少将も認めているはず。

 

そして、フィオレッナにとっては分が悪すぎる。無理やりにでも、彼女は努めて感情を鎮めるしかない。

 

――来るべき日――は、まだ自分にはやってはこない。

 

初めて味わう<敗北と屈辱>。

 

だが、愚かで浅はかな女ではない。

引き際を間違えたりはしない。フィオレッナがそういう種類の人間であることは、オリヴィエも充分に承知している。

 

「フィオ、今回はお前の完敗だ。そうだろう?」

「……ええ、そうですわ」

「それから、早くその髪をなんとかしろ。自慢の銀髪が台無しだ」

「そうさせてもらいますわ」

 

立ち去りかけたフィオレッナが、立ち止まる。振り向かず、背中を向けたままオリヴィエに話しかける。

 

「まだ、問題は残っているのでは?」

「ああ、そのことは当人達の問題だ。お前が気にする事はない」

「別に、気になどしていませんわ」

「そうか?」

「ええ、そうですとも」

 

そのまま奥に去るフィオレッナを見ながら、オリヴィエの口元がほんの少し緩む。

 

「まったく、お前の娘は素直ではないな」

「あの勝気なところが良いのですよ」

「だが、度を過ぎると火傷をする。父娘ともしばらく大人しくしていることだ」

「少将殿のご忠告とあれば、無下にはできませんな」

 

今回は完全に自分達の負けだ。これ以上こちらが手出ししなければ、オリヴィエは少将としてではなく、ただの客として何もしないはず。

だが、恐らく次はないだろう。

 

「止むを得ませんな…」

 

丁寧にお辞儀をするとファザー・コルネオもまた、奥へと姿を消した。

だが、頭を下げながらも、その後姿は最後まで威風堂々として媚びることはなかった。

 

オリヴィエの口端が上がる。

 

「いずれ、本気で対峙する時が楽しみな男だ。そして娘もな。あとは………あの無能だ。一億センズの価値がなければぶった切る」

 

さあ、どうする? お前に男としての価値があるのかどうか、特と見させてもらうぞ。

 

 


ようやく、会場内は動き出していた。

武装集団はコルネオ家の警備と部下に取り押さえられ、怪我人は別室へと運び出される。

 

そして、ロイは未だ床に座ったままのエドワードを抱え上げた。

「えっ?!」

目の前にやってきたかと思うと、ふわりと抱きかかえられ、しかも、それがお姫様抱きなのがエドワードにはもの凄く恥ずかしい。

 

「あ、あんた何やってんだよ!」

「そうだね、私は何をやっていたのだろうね」

「へ?」

 

真摯な物言いと眼差しに、エドワードはぽかん、としてしまう。

 

「エドワード……今度は、私達の番だ」

「え、番って?」

「あの雨の日の事を、もう一度……」

 

抱きかかえているエドワードの体が、ビクンとほんの少しだが揺れた。

 

急に俯いてしまったエドワードを見ながら、フィオレッナに投げかけられた言葉の数々を、ロイは思い出していた。

やりかたはどうであれ、ロイの心に一石を投じたのは間違いなくフィオレッナだ。

だから、どんなに許せなくとも、紙一重で頬を掠らないよう焔を調整したのだ。でなければ、髪ではなく顔を焼いていただろう。たとえ、それが女性であってもだ。

 

 

思いを巡らせるのは、あの雨の日。

 

ずっとロイを待っていたエドワード。

ずっと雨に濡れているエドワードを見ていたロイ。

 

何も言えず、何も聞けず、ただ冷たい雨だけが降り注いでいた。

 

 

本当なら、互いに言わなければならない言葉、聞かなくてはならない言葉があったはず。

そして、それは今からでも遅くはない。

 

「こちらを、私を見ておくれ……エドワード…」

 

俯いたままの、愛おしい人の名をロイは呼んだ。


えっと、つじつまはあっていますよね?(←とりあえず復習した人)
友よ、後は頼んだぞっ!(←またこの手で逃げた)
まいこ
 誰もがその声を振り返れば、未だ抱きかかえられたままの状態のドレス姿のエドワード。
そんな体制だというのに、彼の怒りの声だけははっきりとホールによく響いた。

「おい・・・・・・」
と、今度はオリヴィエ・アームストロング少将の声が不機嫌極まりない声音でホールに響いた。

「あ?」

「人の耳元でぎゃんぎゃんとわめくな」
溜まらないとばかりにオリヴィエは抱きかかえていたエドワードの身体を乱暴な仕草で床へと下ろした。

「うわ・・」
急に身体を開放されて戸惑ったのは一瞬で、エドワードはすぐさま再びファルザーノに鋭い視線を向けた。

「さっきから聞いてりゃ、好き勝手なことばかりぬかしやがって」

「あんたのそのゲームとやらのお陰で俺がどれだけ大変な思いをしたか!きっちり落とし前つけて貰うからな!」
赤い真紅のドレス姿もそのままに、ファルザーノを指差しながら声高らかに宣言するも・・・。
その様子をそれまで黙って見ていたロイが肩を震わしてて、あげく噴出すように笑いはじめた。

「あんたっ。ここは笑うとこじゃねーだろ!!」
赤いドレスに負けないぐらい顔を赤く染めて、エドワードは舞台の上のロイに抗議した。
「あああ、すまない・・・・つい、可愛らしい姿に見とれて・・・」
言いながらもまだ笑う男に、エドワードはますます顔を赤くして。
「ふざけんなーっ、誰が可愛らしいミジンコどチビかっ」
言いながら言葉の勢いもそのままに、パンと両手を合わせた。
瞬間、青白い練成光が辺りを照らし、エドワードの右腕は鋼の剣へと姿を変えた。
エドワードは一度「ブンッ!」と素振りのような仕草で剣で空を切ると、そのままファルザーノに向けてそれを構えた。
それを見てもファルザーノは表情一つ動かさず、黙って落ち着いた視線でエドワードを見下ろしている。




「おい」
不機嫌そうな声もそのままにオリヴィエは舞台の上の男に話しかける。
「何か」
悠然と答える男の態度に少しイラつきながらも、オリヴィエは顎でドレス姿の少年を指した。

「アレを止めろ、マスタング・・・」
「あれを・・・・ですか」
少しおどけた口調で言い返されたのが気にいらなかったのか、オリヴィエはギロリとロイを睨んだ。
「言っておくがクスリは完全に切れた訳ではないぞ・・・・派手に動けばあんな小さな身体だ。クスリはすぐにまた回るぞ」
「ああ、少将。出来ましたら小さいというのは是非違う表現で・・・・」
ロイの見当違いな答えに、オリヴィエの機嫌は更に急降下する。
「貴様、私にここで切り捨てられたいのかっ」
「いえ・・・・申し訳ありません・・・。ですがアレは人形などでおさまっているタマではないのです」

「貴様、よくそれで上司が勤まっていたなっ」
「上司として後見人として・・・・・なんとか偽ってここまできましたが、どうやらそれも限界のようです」
そう言って彼へと再び視線を投げた男は、少し自嘲気味に笑っているようにも見えた。
「言っていろ、無能が!ふん、好きにしろ。ただし、一億分は働いて貰うぞ」
そう宣言してニヤリと笑った顔は、一枚も二枚も自分の上をいく、あの北を統べる女王の顔だった。
「まだ支払いも済んでいないのに、取り分の主張ですか・・・・・まったく手厳しいことだ」
そう言ってロイもまた口元をあげて笑った。






「私は君には出来たら別の意味でのお相手をして欲しかったんだがね」
エドワードに鋼の剣を向けられているというのに、ファルザーノの声音は酷く落ち着きはらっていた。
この余裕がどこからくるものなのかが読めずにエドワードは戸惑っていた。

「冗談っ」
言いながらエドワードはじりじりと男との間合いを詰める。
そんな動きですら長いドレスの裾は邪魔をする。

くそっ、動きにくいっ。
瞬間、長いドレスの裾に足が絡まった!
体制を立て直そうとバランスを取ろうとするが手遅れで、その上一瞬視界がぶれた。
あ・・・・と思った瞬間にはぐらりっと身体が揺れた。

「っ・・」
倒れそうになった身体は、気がつけば何かに受け止められていて。
見ればいつの間に背後に来たのかフィオレッナが後ろからエドワードの身体を支えていた。

「悪ぃ・・・・」
「どういたしまして」
女性に助けて貰うなど男として恥だとばかりに、慌てて彼女から身体を離そうと試みる。
だが、次の瞬間・・・・ガシャリという物騒な音が耳元でした。
彼女の手には銃が握られていた。

エドワードはゆっくりとホールドアップしながらも、嫌味を言うのは忘れない。
「お礼、言ってソンしたな」
「あら・・・・・そう。ごめんなさいね・・・・・私、手の上で転がされるなんて真っ平ごめんなのよ。あなたのようにイレギュラーな動きをしてくれる存在は大歓迎だわ」
言いながらエドワードの頭に銃をピタリと押し当てた。

「楽しいところまではもう一息・・・・・足らなかったんでしたわね」
そう言ってファルザーノを振り返った。
「でしたら・・・・・私が楽しませてさしあげてよ?」
言いながら彼女は舞台にいるロイのほうに見せ付けるように、エドワードと自分の身体を向けた。

「マスタング大佐、私との最初のお約束を果たして頂きたいの」
ロイの顔からすっと表情が消えた。
フィオレッナを見つめるその双眼が、色をなくして温度を下げ・・・・そのまま静かに細められた。


覚えてらっしゃるかしら・・・・と、そう言ってフィオレッナは笑った。


   ++++++++++++++++++++++++++++++++

わぁーい、お久し振りに絡めましたっ♥
時間が開くと設定がわからなくなってるワナ・・・・涙
全部設定一から読み直しましたーっ(>_<) ←無能めっ

例によって「連ドラ」切りのようなのりですが、どうぞ続きをどなたかお願いしますっ。

つぐみ拝
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ILLUSTRATION BY nyao