-------------●ここは鋼の錬金術師「ロイ×エドSSリレー企画」の二次創作サイトです♪●-------------※全ての画像・テキストの無断掲載持ち帰りはしないでください・初めての方は「about」をお読みください※since07/10/25

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「一番大事なものを手放そうとするから隙ができるのよ?そこに付け入られるのも貴方の手落ちね」
悪魔のような笑み。けれど発している口調はおかしいくらいに静かなのだ。慈愛に満ちているとさえ受け取れるほどに。
「雨の中、ずっと待たせて。貴方は雨に濡れているこの子を見続けていた……。ねえ、何を告げるつもりだったの?」
告げる、つもりだった。
あの冷たい雨の中。悲しみに濡れるエドワード。
あの場所でずっと、雨に濡れることも構わず私を待っていてくれた彼に。
さよなら、と。
来てくれて、そして私を待ち続けていてくれた。それだけで十分だった…・・・はずなのに。
目的へと走る自分についてきて欲しいなどと言えるはずもなく。
エドワードもエドワードで。叶えなければならない望みがあるのだから。
この別れは必然なのだと、これがお互いのためなのだと。
別れたとしても、この気持ちは変わらないと。そう、そのはずだったというのに。
……これは、なんだ。この女は……。手放そうとするから隙ができる、だと?
「何が言いたい、貴様……」
笑顔の下で何を考えているのかわからない。今ロイにはっきりとわかっているのはフィオレッナの恐ろしいほどの情報の正確さ、のみだ。感情に引きずられそうになる心を、ロイは何とか理性で止めようとていた。
「この子のことを貴方はもう手放すのでしょう?なら私が好きにしてもいいということよ」
「……何をする、つもりだ」
尖った氷に切りつけられたように寒気が走る。ふるえそうな指先をとどめているのはロイの矜持でしかない。冷静に対処せねば思わぬ落とし穴に落とされる。それがわかっているというのに反撃の糸口がつかめないどころか焦りだけが増していく。フィオレッナのペースに乗せられたまま、どんどんと退路を狭められていくような感じさえしてしまう。
「無関係なモノ、でしょう?壊そうと汚そうと貴方に口を出す権利はないわ。貴方が捨てたものを私が拾った。ただそれだけよ?ああ、そう…ね。少しだけ教えてあげようかしら?……パパはこの人形で遊ぼうとしたわ。乱暴で好き勝手する困ったパパでごめんなさいね?でも私は綺麗に着飾ってここに大事に座らせてあげているの。……いつか飽きるまで、ね 」
ころころと声を立てて笑うフィオレッナに対する怒りが抑えられそうもない。冷静に、と理性は告げてくるのだが感情は叫ぶのだ。そんなことのために私は彼を手放そうとしたのではない、と。
「……鋼のに何かしてみろ。その時は私が貴様を地獄に送ってやる」
低く抑えたかすれた声。そこにはフィオレッナに対する怒りとも殺意ともとれるほどの強い衝動が込められていた。けれどこの言葉を聞いた瞬間、フィオレッナは「あははははははは」と高笑いをしたのだ。
「そうやっていつまでも逃げているがいいわ、ロイ・マスタング。情けない男ね。この子を心の底から捨てることもできず、ただ、相手の幸せのために身を引いたなんて似非ロマンチシズムに浸るのがお似合いよ。『別れても愛しているのは君だけだ』なんて自分に酔ったセリフでも言うつもりだったんでしょ?笑わせないで。そんなのは捨てる方の勝手な言い分だわ。身勝手な理屈であなたの都合に振り廻されたほうがどれほど傷つくと思うの?それを受け止めることもできやしないクセに」
ぐ、っと。詰まった。感情は激昂するが、フィオレッナの言うことはある意味正論で。だがここで引き下がるわけにはいかない。ロイは口を開きかけたが、フィオレッナに機先を制された。
「……まあいいでしょう。いきなり要求を突きつけて即答しなさいなんて不作法ですもの。お返事は次に会った時で構いませんわよ?」
たおやかな笑顔でフィオレッナは会話を終了させた。そして、いつの間にか開けられていたのか扉の向こうには銃器を構えたフィオレッナの部下たちがずらりと勢揃いしていて。
「お客様はお帰りよ。丁重にお見送りを」
部下に告げた言葉は簡潔だ。ロイはやはりフィオレッナを睨みつけることしかできなかった。
「ごきげんよう、ロイ・マスタング大佐。次に会う時を楽しみにしておりますわ」
フィオレッナの声はバタンと閉められた扉に遮られたのか、それともロイへと届いたのか。どちらにしろそれにはフィオレッナはすでに無関心だった。手にしていたライフルはポイっと投げ捨てて、スカートをひるがえすようにくるりとエドワードの方を向いた。
「もういいわよぉ、起きているんでしょ?」
ゆっくりと見開かれた金色の瞳。それはフィオレッナを睨みつけていた。
「あのな、アンタ、大佐のことイジメすぎ。……あれじゃ、今頃……」
「話したことはすべて私の本心よ。どの道を選んでもらっても私は構わないの。私の目的はこの家を手にすること。そのためにはパパがどうなろうとロイ・マスタングがどうなろうと知ったことではないわ。ついでに言うとあなたも今のところ私の大事なカードの一枚にすぎないわよ?」
首をかしげるその様子は愛らしい。だがその口調や雰囲気にうっかりだまされてはいけないのだ。確かにフィオレッナは本心しか話さないのだろう。それが彼女に捕まってからの短い時間の中でもエドワードには感じられた。かといって油断は禁物なのだ。ロイすらやりこめてしまうほどの手腕の持ち主、父親の駒になどなる女性ではないのだろう。抜きかけた気を引き締めなければと、エドワードは未だうまく動かない手足の代わりに思考のみを巡らし始めた。
「一応しばらくは大人しくしてやってもいい。だけどオレはカードなんかじゃねえ。……オレはオレのルールで動く。ロ…、大佐を、アンタの駒なんかにはさせねえ……」
潜入捜査の目的は半分は果たしたようなものだ。ファルザーノが何を考えどう動くつもりなのか。それはわかった。けれどそれがわかったところでエドワードは今この段階でこの家から離れるわけにはいかなかった。ファルザーノよりもこのフィオレッナがどう動くか、それが全くと言っていいほど読めないのだ。本気で、ロイに自身の父親を殺させようとしているのか、それともそれを布石に何か事を起こそうとしているのか。それすらわからねばこの状況を好転させられる勝機も掴むことはできない。多少の身の危険は感じなくもないが、ここはしばらくフィオレッナの動向を探るしかない。エドワードは決意をこめて睨みつける。が、フィオレッナはくすりと微笑むのみだった。
「貴方ねえ、あんな身勝手な男、甘やかすことないでしょお。自分を大事にしてくれない男と付き合っていてもメリットはないわよ?雨の中、何時間も貴方を待たせて。それを影から見ているだけで何にも言わないで次の日には私とお見合いよ?ついでに言うと私とあの人、結婚まで一直線かもしれなくてよ?あなたそれでいいわけ?」
「いいわけねえだろ……」
「わかっているのならなんとかなさい…・・・って、ああそうね。そのためにこの家まで乗り込んできたんですものね。私、そういうのは好きよ」
それもあるが、ロイを暗殺させるわけにいかないからコルネオ家の尻尾くらいつかむつもりの潜入捜査だとはさすがに言うことのできないエドワードではある。
「……なあ、本気でアンタのあのクソ親父。大佐に…殺させるつもりなのか?」
話題を切り替えるためエドワードは単刀直入に切り出した。
が、しかし。フィオレッナはええと?と首をかしげるのみだ。
「どの道を取ってもらってもいいわよぉ?……あのね、私のパパはロイ・マスタングを暗殺してもいいし、私と結婚させて上手い具合に東方を牛耳ってもいいしでどう転んでも自分の利益に結びつくような方法をとるの。私もそうよ。本当に殺してもらってもいいし、パパをこの家の当主から引きずり落とすだけでもいいの。……コルネオの家の者はメリット追求主義なの」
あまりにあまりの言葉にエドワードはあんぐりと口を開けた。
「ねえ、それよりお茶にしない?しゃべりすぎて疲れちゃったのよ」
ふうと吐き出されたため息に、エドワードはこっちの方がため息をつきたいと思った。本当に何を考えているのか少しも読むことができない。言っていることに嘘は感じられないけれど、状況が変われば取る立場もコロコロと変わるのだろう。いっそこの人にコルネオ家を支配させたほうがいいのかもしれない。現状の政権を裏の経済から支えさせるのではなく彼女の人脈だの家の力だのをすべてロイを上に押し上げるために使うことができるのなら。これほど強力なバックもないのかもしれないのだが。
「なあにがお茶だよ。アンタに嗅がされた薬、まだ利いてるんだぜ?……しゃべるくらいは出来っけど、手も足もまだちょっと痺れてるんだけどよ?」
ふと浮かんだ考えだったそれは妙案であるような気もして、軽口をたたきながらもエドワードは錬金術師の論理的な思考で現状を分析してみようと試みた。
力は力だ。それをどう使うかは使うもの次第である。今ここにあるコルネオ家の力。メリット追求主義だというのなら、何も現政権を支えるためだけに暗躍しなくてもいいのではないだろうか。たとえば表舞台に立たせ、堂々と裏の手段を取ることなく権勢を伸ばす。それができれば、そしてあのファルザーノの腐れ親父はともかく、この人なら。そういう真っ当な道の方を望むのではないだろうか。現状ではこんな考えなどとっさの思いつきというよりも単なる机上の空論に過ぎないのだが。それほど大きくフィオレッナの本質から外れていないような気に、何故だかエドワードはなってしまった。
上手く、大佐がこのヒトを御することができるのか?それはかなり難しいと思う。なら、お互いにメリットを提供し合えればいいんじゃねえのかな。大佐も得して、このヒトも得する。そんな道があれば。
だが、上手くいくかどうかというよりも、この考えが前提条件として正しいのかさえも不明で。
もっと、詳しく。この人を知らないといけないのかもしれない……。
さらに深く考えに集中しようとしたが、
「ああそうねえ。うーんと、じゃあね、私が飲ませてあげるわね♪口移しで、のほうがいいかしらー?」
歌うように告げられた発言内容に「な、な、ななななななな……っ!」とエドワードは真っ赤になってしまったのだ。
「くそ……っ!」
完全に今回は負け、だ。その点は認めざるを得ない。侮っていた。コルネオ家をではなくその家の娘を。見合いなどという名目で、父親の駒にされる娘であるのならばどうとでもできるなどと思いあがっていたのかもしれない。完全に、負けた。もう一度、駄目押しのようにロイは胸の中で繰り返した。あれほどの情報の正確さと速さ。どこから手に入れたのか。それすら皆目見当がつかない。そして捕らわれてしまったエドワード。その彼を目の前にしながら引き下がることしかできない自分の不甲斐無さ。考えなければいけないことは山ほどある。
何故あの場にエドワードが捕らえられていたのか。
どうやったら彼をこの手に取り戻すことができるのか。
無意味な殺人などできるわけもない。
コルネオ家を、国の安寧を邪魔する勢力は可及的速やかに取り除かなければならないというのに。
なのに。
胸に浮かんでくるのは現状を覆す策ではなくて、先ほど告げられた言葉の数々だ。
ああ、確かに逃げていたのかもしれない。情けない男と罵られても仕方がない。
フィオレッナだけでなく、ヒューズにも言われた言葉が脳裏を掠めた。
「一番大事なものを見間違えても…か……」
ああ、確かに間違えた。
かもしれないではなく。間違えたのだ。その結果、小娘ともいえるような年齢のフィオレッナにエドワードが捕らわれてしまったのだ。
だが、このままでは終わらない。少なくともエドワードをあの家から救出しなくてはならない。
今回の負けは認めよう。そして如何に己が不甲斐無かったのかも。だが、ロイは負けたまま引き下がるような男ではなかった。何をどうすることが勝ちにつながるのか。それはわからなくとも。
「このままで終わるものか……」
負け惜しみではなく決意として。ロイは前を睨みつけた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第七話担当ノリヲでした。
ロイVSフィオ嬢ちゃん。第一ラウンド終了~、勝者フィオレッナ!さあ、第二ラウンドは?
悪魔のような笑み。けれど発している口調はおかしいくらいに静かなのだ。慈愛に満ちているとさえ受け取れるほどに。
「雨の中、ずっと待たせて。貴方は雨に濡れているこの子を見続けていた……。ねえ、何を告げるつもりだったの?」
告げる、つもりだった。
あの冷たい雨の中。悲しみに濡れるエドワード。
あの場所でずっと、雨に濡れることも構わず私を待っていてくれた彼に。
さよなら、と。
来てくれて、そして私を待ち続けていてくれた。それだけで十分だった…・・・はずなのに。
目的へと走る自分についてきて欲しいなどと言えるはずもなく。
エドワードもエドワードで。叶えなければならない望みがあるのだから。
この別れは必然なのだと、これがお互いのためなのだと。
別れたとしても、この気持ちは変わらないと。そう、そのはずだったというのに。
……これは、なんだ。この女は……。手放そうとするから隙ができる、だと?
「何が言いたい、貴様……」
笑顔の下で何を考えているのかわからない。今ロイにはっきりとわかっているのはフィオレッナの恐ろしいほどの情報の正確さ、のみだ。感情に引きずられそうになる心を、ロイは何とか理性で止めようとていた。
「この子のことを貴方はもう手放すのでしょう?なら私が好きにしてもいいということよ」
「……何をする、つもりだ」
尖った氷に切りつけられたように寒気が走る。ふるえそうな指先をとどめているのはロイの矜持でしかない。冷静に対処せねば思わぬ落とし穴に落とされる。それがわかっているというのに反撃の糸口がつかめないどころか焦りだけが増していく。フィオレッナのペースに乗せられたまま、どんどんと退路を狭められていくような感じさえしてしまう。
「無関係なモノ、でしょう?壊そうと汚そうと貴方に口を出す権利はないわ。貴方が捨てたものを私が拾った。ただそれだけよ?ああ、そう…ね。少しだけ教えてあげようかしら?……パパはこの人形で遊ぼうとしたわ。乱暴で好き勝手する困ったパパでごめんなさいね?でも私は綺麗に着飾ってここに大事に座らせてあげているの。……いつか飽きるまで、ね 」
ころころと声を立てて笑うフィオレッナに対する怒りが抑えられそうもない。冷静に、と理性は告げてくるのだが感情は叫ぶのだ。そんなことのために私は彼を手放そうとしたのではない、と。
「……鋼のに何かしてみろ。その時は私が貴様を地獄に送ってやる」
低く抑えたかすれた声。そこにはフィオレッナに対する怒りとも殺意ともとれるほどの強い衝動が込められていた。けれどこの言葉を聞いた瞬間、フィオレッナは「あははははははは」と高笑いをしたのだ。
「そうやっていつまでも逃げているがいいわ、ロイ・マスタング。情けない男ね。この子を心の底から捨てることもできず、ただ、相手の幸せのために身を引いたなんて似非ロマンチシズムに浸るのがお似合いよ。『別れても愛しているのは君だけだ』なんて自分に酔ったセリフでも言うつもりだったんでしょ?笑わせないで。そんなのは捨てる方の勝手な言い分だわ。身勝手な理屈であなたの都合に振り廻されたほうがどれほど傷つくと思うの?それを受け止めることもできやしないクセに」
ぐ、っと。詰まった。感情は激昂するが、フィオレッナの言うことはある意味正論で。だがここで引き下がるわけにはいかない。ロイは口を開きかけたが、フィオレッナに機先を制された。
「……まあいいでしょう。いきなり要求を突きつけて即答しなさいなんて不作法ですもの。お返事は次に会った時で構いませんわよ?」
たおやかな笑顔でフィオレッナは会話を終了させた。そして、いつの間にか開けられていたのか扉の向こうには銃器を構えたフィオレッナの部下たちがずらりと勢揃いしていて。
「お客様はお帰りよ。丁重にお見送りを」
部下に告げた言葉は簡潔だ。ロイはやはりフィオレッナを睨みつけることしかできなかった。
「ごきげんよう、ロイ・マスタング大佐。次に会う時を楽しみにしておりますわ」
フィオレッナの声はバタンと閉められた扉に遮られたのか、それともロイへと届いたのか。どちらにしろそれにはフィオレッナはすでに無関心だった。手にしていたライフルはポイっと投げ捨てて、スカートをひるがえすようにくるりとエドワードの方を向いた。
「もういいわよぉ、起きているんでしょ?」
ゆっくりと見開かれた金色の瞳。それはフィオレッナを睨みつけていた。
「あのな、アンタ、大佐のことイジメすぎ。……あれじゃ、今頃……」
「話したことはすべて私の本心よ。どの道を選んでもらっても私は構わないの。私の目的はこの家を手にすること。そのためにはパパがどうなろうとロイ・マスタングがどうなろうと知ったことではないわ。ついでに言うとあなたも今のところ私の大事なカードの一枚にすぎないわよ?」
首をかしげるその様子は愛らしい。だがその口調や雰囲気にうっかりだまされてはいけないのだ。確かにフィオレッナは本心しか話さないのだろう。それが彼女に捕まってからの短い時間の中でもエドワードには感じられた。かといって油断は禁物なのだ。ロイすらやりこめてしまうほどの手腕の持ち主、父親の駒になどなる女性ではないのだろう。抜きかけた気を引き締めなければと、エドワードは未だうまく動かない手足の代わりに思考のみを巡らし始めた。
「一応しばらくは大人しくしてやってもいい。だけどオレはカードなんかじゃねえ。……オレはオレのルールで動く。ロ…、大佐を、アンタの駒なんかにはさせねえ……」
潜入捜査の目的は半分は果たしたようなものだ。ファルザーノが何を考えどう動くつもりなのか。それはわかった。けれどそれがわかったところでエドワードは今この段階でこの家から離れるわけにはいかなかった。ファルザーノよりもこのフィオレッナがどう動くか、それが全くと言っていいほど読めないのだ。本気で、ロイに自身の父親を殺させようとしているのか、それともそれを布石に何か事を起こそうとしているのか。それすらわからねばこの状況を好転させられる勝機も掴むことはできない。多少の身の危険は感じなくもないが、ここはしばらくフィオレッナの動向を探るしかない。エドワードは決意をこめて睨みつける。が、フィオレッナはくすりと微笑むのみだった。
「貴方ねえ、あんな身勝手な男、甘やかすことないでしょお。自分を大事にしてくれない男と付き合っていてもメリットはないわよ?雨の中、何時間も貴方を待たせて。それを影から見ているだけで何にも言わないで次の日には私とお見合いよ?ついでに言うと私とあの人、結婚まで一直線かもしれなくてよ?あなたそれでいいわけ?」
「いいわけねえだろ……」
「わかっているのならなんとかなさい…・・・って、ああそうね。そのためにこの家まで乗り込んできたんですものね。私、そういうのは好きよ」
それもあるが、ロイを暗殺させるわけにいかないからコルネオ家の尻尾くらいつかむつもりの潜入捜査だとはさすがに言うことのできないエドワードではある。
「……なあ、本気でアンタのあのクソ親父。大佐に…殺させるつもりなのか?」
話題を切り替えるためエドワードは単刀直入に切り出した。
が、しかし。フィオレッナはええと?と首をかしげるのみだ。
「どの道を取ってもらってもいいわよぉ?……あのね、私のパパはロイ・マスタングを暗殺してもいいし、私と結婚させて上手い具合に東方を牛耳ってもいいしでどう転んでも自分の利益に結びつくような方法をとるの。私もそうよ。本当に殺してもらってもいいし、パパをこの家の当主から引きずり落とすだけでもいいの。……コルネオの家の者はメリット追求主義なの」
あまりにあまりの言葉にエドワードはあんぐりと口を開けた。
「ねえ、それよりお茶にしない?しゃべりすぎて疲れちゃったのよ」
ふうと吐き出されたため息に、エドワードはこっちの方がため息をつきたいと思った。本当に何を考えているのか少しも読むことができない。言っていることに嘘は感じられないけれど、状況が変われば取る立場もコロコロと変わるのだろう。いっそこの人にコルネオ家を支配させたほうがいいのかもしれない。現状の政権を裏の経済から支えさせるのではなく彼女の人脈だの家の力だのをすべてロイを上に押し上げるために使うことができるのなら。これほど強力なバックもないのかもしれないのだが。
「なあにがお茶だよ。アンタに嗅がされた薬、まだ利いてるんだぜ?……しゃべるくらいは出来っけど、手も足もまだちょっと痺れてるんだけどよ?」
ふと浮かんだ考えだったそれは妙案であるような気もして、軽口をたたきながらもエドワードは錬金術師の論理的な思考で現状を分析してみようと試みた。
力は力だ。それをどう使うかは使うもの次第である。今ここにあるコルネオ家の力。メリット追求主義だというのなら、何も現政権を支えるためだけに暗躍しなくてもいいのではないだろうか。たとえば表舞台に立たせ、堂々と裏の手段を取ることなく権勢を伸ばす。それができれば、そしてあのファルザーノの腐れ親父はともかく、この人なら。そういう真っ当な道の方を望むのではないだろうか。現状ではこんな考えなどとっさの思いつきというよりも単なる机上の空論に過ぎないのだが。それほど大きくフィオレッナの本質から外れていないような気に、何故だかエドワードはなってしまった。
上手く、大佐がこのヒトを御することができるのか?それはかなり難しいと思う。なら、お互いにメリットを提供し合えればいいんじゃねえのかな。大佐も得して、このヒトも得する。そんな道があれば。
だが、上手くいくかどうかというよりも、この考えが前提条件として正しいのかさえも不明で。
もっと、詳しく。この人を知らないといけないのかもしれない……。
さらに深く考えに集中しようとしたが、
「ああそうねえ。うーんと、じゃあね、私が飲ませてあげるわね♪口移しで、のほうがいいかしらー?」
歌うように告げられた発言内容に「な、な、ななななななな……っ!」とエドワードは真っ赤になってしまったのだ。
「くそ……っ!」
完全に今回は負け、だ。その点は認めざるを得ない。侮っていた。コルネオ家をではなくその家の娘を。見合いなどという名目で、父親の駒にされる娘であるのならばどうとでもできるなどと思いあがっていたのかもしれない。完全に、負けた。もう一度、駄目押しのようにロイは胸の中で繰り返した。あれほどの情報の正確さと速さ。どこから手に入れたのか。それすら皆目見当がつかない。そして捕らわれてしまったエドワード。その彼を目の前にしながら引き下がることしかできない自分の不甲斐無さ。考えなければいけないことは山ほどある。
何故あの場にエドワードが捕らえられていたのか。
どうやったら彼をこの手に取り戻すことができるのか。
無意味な殺人などできるわけもない。
コルネオ家を、国の安寧を邪魔する勢力は可及的速やかに取り除かなければならないというのに。
なのに。
胸に浮かんでくるのは現状を覆す策ではなくて、先ほど告げられた言葉の数々だ。
ああ、確かに逃げていたのかもしれない。情けない男と罵られても仕方がない。
フィオレッナだけでなく、ヒューズにも言われた言葉が脳裏を掠めた。
「一番大事なものを見間違えても…か……」
ああ、確かに間違えた。
かもしれないではなく。間違えたのだ。その結果、小娘ともいえるような年齢のフィオレッナにエドワードが捕らわれてしまったのだ。
だが、このままでは終わらない。少なくともエドワードをあの家から救出しなくてはならない。
今回の負けは認めよう。そして如何に己が不甲斐無かったのかも。だが、ロイは負けたまま引き下がるような男ではなかった。何をどうすることが勝ちにつながるのか。それはわからなくとも。
「このままで終わるものか……」
負け惜しみではなく決意として。ロイは前を睨みつけた。
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第七話担当ノリヲでした。
ロイVSフィオ嬢ちゃん。第一ラウンド終了~、勝者フィオレッナ!さあ、第二ラウンドは?
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ヘタレ返上なるか!?
お嬢に惚れました!!カッコいい…!合理主義者って、すごく素っ気ないイメージがありましたが、彼女ほど上手に付き合えば面白そうな人っていないかもしれないですね~。さっすがノリヲさんvv
面接の帰りにネットカフェ寄ってよかった…!!
面接の帰りにネットカフェ寄ってよかった…!!
一点の光が見えるかも!?
可憐かつ優雅なのに、凶悪であり、気まぐれだけど論理的でもある。
素手戦闘も銃火器戦闘も、頭脳線もいける。
淡白に割り切ってるかと思えば、非常に感情に訴えることもできる。
素敵です、お嬢!
……と分析すると、エドもそういうタイプですよね!
エドもお嬢も、そんな「似た物同士の臭い」と、お互いの利点を察し始めていそうですよね~!
エドがここですぐに助け出されず、この場に留まることによって、何か目の覚めるようなことが起きそうな予感がします!
……ロイの方はまだ疑心暗鬼と敵意・自責の念が丸出しで、広い視野で状況が捉えられていませんね(落ち着けロイ!頭冷やせ~!)
キミだって論理的な錬金科学者のはずだマスタング君!
いやでも、もーちょっと悶々と悩んでみてください。
前半ではエドが精神的に可哀想だったけれど~~
今度は悩めるイイ男の姿が堪能できましたvvv
悩めるロイが個人的に好みな私です~(こーらー)
素手戦闘も銃火器戦闘も、頭脳線もいける。
淡白に割り切ってるかと思えば、非常に感情に訴えることもできる。
素敵です、お嬢!
……と分析すると、エドもそういうタイプですよね!
エドもお嬢も、そんな「似た物同士の臭い」と、お互いの利点を察し始めていそうですよね~!
エドがここですぐに助け出されず、この場に留まることによって、何か目の覚めるようなことが起きそうな予感がします!
……ロイの方はまだ疑心暗鬼と敵意・自責の念が丸出しで、広い視野で状況が捉えられていませんね(落ち着けロイ!頭冷やせ~!)
キミだって論理的な錬金科学者のはずだマスタング君!
いやでも、もーちょっと悶々と悩んでみてください。
前半ではエドが精神的に可哀想だったけれど~~
今度は悩めるイイ男の姿が堪能できましたvvv
悩めるロイが個人的に好みな私です~(こーらー)
やったーっ、漂白済み♪←違っ
さ す が ノリヲさんっ。
イメージはそのままに綺麗に漂白してくださって、そのうえお嬢のキャラを更にしっかりしたキャラ設定に!!!!!!
有難うございますっ(歓喜っ)
エドワードさん、もう少しでお嬢の性格を完全に掴みかけていたのに。残念っ。
でもこれで彼がお嬢という人間を理解してしまうと、深入りしすぎてしまいそうな予感です。そうなる前にロイにへたれを返上して汚名挽回して貰わないとっ。
うわーっ、続きが気になりますね~っ。
イメージはそのままに綺麗に漂白してくださって、そのうえお嬢のキャラを更にしっかりしたキャラ設定に!!!!!!
有難うございますっ(歓喜っ)
エドワードさん、もう少しでお嬢の性格を完全に掴みかけていたのに。残念っ。
でもこれで彼がお嬢という人間を理解してしまうと、深入りしすぎてしまいそうな予感です。そうなる前にロイにへたれを返上して汚名挽回して貰わないとっ。
うわーっ、続きが気になりますね~っ。
無題
つぐみ様の黒フィオ見た瞬間「あ、第一ラウンドはロイの負けね♪」とうっかり思っちまったので、こーなりましたが。ロ、ロイがんばーv
樹様
面接頑張ってください。私も風邪治すのがんばります(…なんか違うって)
フィオ嬢かっこいいっすか!ありがとうございますv
まいこ様
ホント、頑張れロイ!ですよ!男なら二兎追って二兎とも得んかい!!と気合い入れてやってください。
さと様
流石の分析派、さと様v読みが深いんだもんもーvそうなんです。エドワードは頑張ってるってのにロイがまだ悶々と。さっさと本来の自分取り戻してもらいたいところですね!
つぐみ様
第六話読んだ瞬間これしかないだろーっと思いましたよ。黒フィオ嬢=ロイいじめ(笑)。漂泊なんてとんでもない。これもフィオ、あれもフィオですわ。情けない男など一喝してやれ~vっというか、こうでもしないとロイさん一生雨に打たれてそうで。
汚名返上、名誉挽回。恋人をその手に取り戻すことが出来るのか!?待て次回!!
……ところでファルザーノパパはいまだに股間の痛みを耐えているんでしょうか…?
樹様
面接頑張ってください。私も風邪治すのがんばります(…なんか違うって)
フィオ嬢かっこいいっすか!ありがとうございますv
まいこ様
ホント、頑張れロイ!ですよ!男なら二兎追って二兎とも得んかい!!と気合い入れてやってください。
さと様
流石の分析派、さと様v読みが深いんだもんもーvそうなんです。エドワードは頑張ってるってのにロイがまだ悶々と。さっさと本来の自分取り戻してもらいたいところですね!
つぐみ様
第六話読んだ瞬間これしかないだろーっと思いましたよ。黒フィオ嬢=ロイいじめ(笑)。漂泊なんてとんでもない。これもフィオ、あれもフィオですわ。情けない男など一喝してやれ~vっというか、こうでもしないとロイさん一生雨に打たれてそうで。
汚名返上、名誉挽回。恋人をその手に取り戻すことが出来るのか!?待て次回!!
……ところでファルザーノパパはいまだに股間の痛みを耐えているんでしょうか…?