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-------------●ここは鋼の錬金術師「ロイ×エドSSリレー企画」の二次創作サイトです♪●-------------※全ての画像・テキストの無断掲載持ち帰りはしないでください・初めての方は「about」をお読みください※since07/10/25
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初めてのお散歩・後編
 

 
おさんぽできるもん!
 
なんて、仔猫エドが飛び出してしまった。でも困ったことに金色の仔猫エドワードは、ロイの溺愛で筋金入りの箱入り仔猫で。
 
お外には何があるの? 
そう、垣根の向こうは未知なる世界。大人への第一歩なのだ。
 
そして、ブロック塀に前足を乗せたまま、お隣の大型犬ハボックは固まったまま動けないでいた。
 
「ロ、ロイさんに何て言えばいいんだ?」
「なにを、だ」
「ひっ!……い、いつお帰りになったんすかっ!」
「たった今だが……」
 
焦っていたらロイがお散歩から帰ってきた。
メス猫に絶大な人気を誇る甘いテノールの声も、今のハボックには心臓に悪いものでしかない。間違いなく、確実に寿命は縮んだ。
 
どう言えばいいんだ!というか、ロイを怒らせないようにする為には、どうすればいいのか、脳内を駆け巡るのは無駄な抵抗なことばかり。
 
そう、無駄。
だってそんなものない。
あるわけない。
 
エドワードが一匹で外へ出てしまったのだから。子守失格。でも、それはロイだって同じ。
 
ハボックの青ざめかたと、10cmほどの開いている縁側のガラス戸。
アルフォンスも自分も、散歩へ出かけているのだから開いていて当然なのだけれど、それにしてもハボックの焦りっぷりが尋常ではなくて。
しかも、「にょい、かえったの!」と小さな金色が飛び出してこない。
 
「……いつ、だ」
「え? あ、あの…」
「エドワードが外へ出たのは、何時ごろかと聞いている」
「は、はいっ!今さっき出たばかりっす!」
 
ちっと舌打ちをすると、ロイは垣根をくぐって外へと出て行った。ロイにハボックを怒ることはできない。
本来、子守を任されているのはロイなのだから。
 
散歩から帰ってくると、いつも自分に飛んでくるエドワードが可愛らしくて、「にょいといっしょにおさんぽにいく!」と駄々をこねる姿も、とってもキュート。正しく目の中に入れても痛くない存在なのだ、エドワードは。
だから、大きくなったら一緒にお散歩デビューなんて考えてはいても、エドワードを皆に見せるのは勿体無い。
いや、見せびらかさない方が勿体無いかも?
 
ロイはロイなりに悩んでいたらしい。
 
でも、いつも置いていかれているエドワードにしてみれば、そろそろ、ただ待っているだけなんて限界だった。
まして、弟のアルフォンスがお散歩に出ているのだから、余計に「おれもいきたい!」な気持ちが高まるのも当然のことで。
 
「きょうのおさんぽは、ぜったいついていく!」と、意気込んでいた。
でも今は冬、ぽかぽかコタツには勝てずお昼寝タイム突入してしまったのだ。そして、やはりというか、目が覚めたら誰もいなかった。
 
ハボックが何を言っても、エドワードには納得できない。待っているなんて、もうやだもん!
勢いに任せて、垣根をくぐって<外>に出た。
出て、初めての外をとにかく走った。
りんりんりんりん、鈴の音が昼過ぎの住宅地に響き渡る猪突猛進な走りっぷりは、かなり危ない。
車は急には止まれない。
でも、危ないけど住宅地のど真ん中で、車道とは離れていたのが幸いした。この道に車はほとんど通らない。
 
車は通らないけれど、猫たちならいる。
 
りんりんりんりんりんどんっ!こて…。
 
猪突猛進に走っていたエドワードが、何かにぶつかってこけた。そんな音。
 
「い、いたーい」
ぶつかって転んで、とっても痛い。お庭で遊んでいて転んだりしたら、いつもすかさず「大丈夫かい、エド?」とロイが飛んできて舐めてくれるけど、今は外。
ロイはいない。
いるのは、ぶつかった対象物で。
 
「あれ?なんだ、えらくちっさいね」
「ちっさくなんかないやい!おれはもうよんかげつなんだぞ!」
「4ヶ月?2ヶ月の間違いだろ、おちびちゃん」
 
挨拶代わりとばかりに、頭でちょん、とエドワードを突いてきた。もちろん、ころりん、と転がるのは必然で。
「なにすんだよっ!」
思わず涙目で訴えた。
でも真っ黒な猫は、「面白いや」と笑うばかり。
そんな時、
「いい加減にしなさい、エンヴィー。そんな小さな仔をからかってはダメよ」
「げ、ラスト…」
真っ黒な毛並みの、ラストというメス猫が窘めてくれた。
 
「え~と面白くてつい」
「仔猫ちゃん、大丈夫?」
「おれ、ちいさくなんかないもん!だいじょうぶだもん!」
「あら、勇ましいのね」
 
ロイと同じ黒い毛並みの猫達。種類も同じようだ。とてもロイによく似ている。
でもロイじゃない。だからなのか、つい涙腺が緩んでしまった。
 
「ふ、ふぇ…」
「え!?お、おい、泣くなよ、泣くようなことかよ!」
「ふぇーんっ!にょいーっっ!!」
 
とうとう、にょい、と叫びながら泣いてしまった。
困ったのは、エンヴィーとラストだ。
 
「何だよ。これじゃ僕達が泣かしたみたいじゃないか」
「あら、泣かせたのでしょ?」
「違うよ、こいつが勝手に泣き出したんだろ!」
 
と、二匹が言い合っている間も、エドワードは「にょいにょい!」と泣き叫ぶばかり。
 
「困ったわね。迷子のようだけれど…」
「にょい、って何だ??」
 
毛並みはぴかぴかで首輪がついている。間違いなく飼い猫。それも、恐らく外へ出たのは初めてなのだろう。
この町内は毎日散歩しているが、金色の仔猫を見るのは今日が初めてだ。
 
「にょい、ね。誰かの名前なのね」
「あっはは、間抜けな名前!そいつの顔を見てみたいや♪」
「私に何か用かね」
 
聞き覚えのある嫌味な程の甘いテノールの声に、エンヴィーはゲンナリする。
 
「誰もあんたなんか呼んでないさ。ロ…」
「にょいっ!」
 
今まで泣いていた仔猫が、耳も尻尾もぴんっと立たせてロイに飛んでいく。そう、まさしくダイブ。
呆気にとられるエンヴィーとラストを他所に、ロイは擦り寄ってきたエドワードを優しく舐めだした。
 
「寂しい思いをさせてしまったようだね。すまない、エドワード」
「にょい~vv」
 
二匹の周りは桃色。ハートも飛んでいる。
 
「何、あれ?っていうか、ロイがにょい??」
「そうみたいね。笑ってはダメよ、エンヴィー…」
「わ、分かって…るって…っ」
 
メス猫の憧れ王子様とまで言われているロイが、にょい!しかも、この舌ッ足らずな仔猫に骨抜きにされている?!
 
エンヴィーは笑いを堪えるのに必死だ。とりあえず、ロイは怒らせないことに越したことはない。優男風のくせに、怒らせると怖いから。
それ以前にエンヴィーはロイにもラストに頭が上がらない。年齢順だから仕方がない。でもそれは、ロイも同じだったりする。
 
「世話をかけたようだな。ラスト…」
「気をつけてあげなさい、ロイ」
「……分かっている」
 
叱られたように、何だかロイはバツが悪そうだ。やがて、エドワードの首を咥えて歩き出す。
 
 
ぶらぶら、ロイに咥えられてエドワードの小さな体が揺れていて。歩かせても良いのだが、何が起きるか分からない。エドワードはエドワードで、揺れて楽しい。
まったくもって、まだまだ赤ちゃんなエドワードと、過保護なロイなのだった。
 
そして家に帰ると、先に帰っていたアルフォンスにエドワードはこってり怒られた。
 
「にいさん!どこ行ってたの!勝手に飛び出したら危ないじゃないか!!」
「おまえだってさんぽしてるじゃん…」
「僕はロイ兄さんの許可が出てるから良いの!」
「お、おれだって…」
「生まれたばかりの赤ちゃんみたいに、首根っこ咥えられて帰ってきたのはどこの誰?しかも楽しそうにさ」
「うー」
 
まだまだ、エドワードには分が悪い。お散歩デビューはもう少し先になりそうだ。
 
 
ぽかぽか縁側でお昼寝。
アルフォンスはお散歩に出かけていないけれど、今日はロイが傍にいてくれて、エドワードはぴたっ、とくっついている。
ロイとっても幸せ、エドワードも幸せ。
 
「なあ、にょい……」
「ん、なんだね?」
 
夢心地なエドワードに、優しい声が響いて更に心地よくなる。
 
「あのえんびーとらすとって、にょいのしってるねこ?」
「そうだね、弟と姉だよ」
 
ロイにはラストという姉がいる。でも、カーティス夫妻に引き取られたのは、まだ仔猫だったロイで。
ロイが引き取られた後にエンヴィーが生まれて、その後にグラトニー、末にラースが生まれたばかり。
皆、兄弟だけあって同じ真っ黒な毛並みだ。
 
「でも……にょいが、いちばんかっこいい…」
 
むにゃむにゃと、顔を埋めているエドワードの寝言に、ロイの鼓動は跳ね上がってしまう。
 
「私もね、兄弟たちよりもアルフォンスよりも……君が一番だよ」
 
真冬だけど、二匹はとっても温かい。
木枯らしだって、春の陽気に変えてしまうほど、とっても幸せなお昼寝の時間。
 
明日は、エドワードを連れてお散歩をしてみようか、と思うロイだった。
 
おしまい
 

 
お散歩デビューは、そのまま「ロイの恋人お披露目」&「誰も手を出すな」なアピールになるんだろうなと思います(笑)まいこ
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12/01 拍手「叔父ロイ×甥っ子エド・12月~前編~」
12/12  上記作品・中編
12/22  上記作品・後編

これで、完結致になります。

※コメントにノリヲさんからのメッセージが♪
更新のお知らせ

11/21 ・拍手「叔父ロイ×甥っ子エド」11月後編
11/19 ・コールドレイン第22話

叔父ロイ×受験生エドワード

『成就の十一月』②



あんまり重たくならないように、さらっと告げたつもりだけど。ロイ兄はすんごい硬直してる。

まるで隠してた本音を暴かれた時みたいに動揺して、その動揺をむりやり抑えつけてるってそんな感じ。

「……駄目だよ、エドワード」

うめき声みたいな低い声が吐き出だれて。
辛そうに、口元を歪めて。

ああ、やっぱり。オレってやっぱり天才かも。

わかった。わかってしまった。
予測はかなりの精度で命中だ。

ロイ兄は嘘なんか言ってない。

だけど、本当の本音はオレにずっと隠してたんだ。いや、隠してきたってのは少し違うか。

ロイ兄はオレのことたぶん好きだ。それもあの夏に言われたようなプラトニックとかじゃなくて、オレと同じ意味の好きでいてくれてる。


あ、それも、嘘じゃないんだ。叔父として、プラトニックな愛情だなんていうのもロイ兄の、多分本心。

両方、ホントのことで。
きっと本心というよりもそれはロイ兄の願望。

たぶんきっと。
両想いであろうとも、ロイ兄はこの気持ちを成就させるつもりはないんだろう。

手を繋いで、抱きしめて。髪を撫でて……そこまでがロイ兄の許せること。
それ以上は駄目だって、そういう決心はきっと固い。
プラトニックだ、なんて前に言われたけど。それはロイ兄の感情じゃなくて……願い、なんだ。


プラトニックでいいなんていうのも嘘じゃない。それもきっとロイ兄の本当の気持ち。そう願って自分を律して。
いつまでも一緒に居たい。だからこのままで。叔父という立場からすればその先に踏み込むようなことはしてはいけないと。

そう願う気持ちはオレにもわかる。だけど。


なあ、ロイ兄。オレはもう庇護されるだけの子供じゃない。

「あのな、ロイ兄。オレ、一生ずっとロイ兄につき纏うぜ。離れない。叔父だからとか甥だからとかって思う気持ちもわかる、と思う。
うん、母さんたちに悪いなってオレだってホントはちっとは思ってた。だけどさ、ウチの家族、オレ達が本気で思ってることに対してだったら、それが世間の常識的でないことだとしても、ちゃんと認めてくれるはずだ。
そういうふうに信頼してくれてもいいんじゃねえかな」

「エドワード……」

「アルフォンスも母さんも、ちゃんとオレの気持ち分かってくれると思う。
世間一般的な当たり前の幸せなんかよりも、本当の意味でオレが幸せになった方が嬉しいって絶対そう思ってくれる。
ロイ兄とオレは、叔父と甥で、それって世間的には禁忌だけどさ。でも、本気だってわかって理解してくれるはずだ。
なあ、ロイ兄。そうやってちっとはオレ達のこと、信じてくれねえかな?
それにさ、実はオレ……母さんたちに反対されようと構わないって思うんだ」

「構わない、わけないだろう。反対されるようなことはしてはならないよ。家族なのだから……」

ロイ兄はオレの言った言葉を別の意味に取ったらしい。オレはふるふると頭を横に振った。

「違う、ロイ兄。そーじゃねえよ。反対されても構わないってーのは、そういう意味じゃない。
あのな、今反対されたって、そのうち賛成してもらえるようにってオレは母さんたち説得する。
そのくらいの根性ある。
なあ、ロイ兄。ロイ兄がオレのこと好きだって認めてくれるまで何年かかったと思ってんだよ。
母さんたち説得するのに年単位の時間がかかったとしてもオレはぜったいに諦めねえし、それにそんな時間かけなくたってきっと母さんたち、オレらのこと認めてくれる。
それも絶対大丈夫。
だから、な。
ロイ兄もちゃんと覚悟決めてくんねえかな?」

ロイ兄はオレを黙って見つめてきた。オレも言うべきことは言ったからこれ以上は言葉を重ねないでただ黙って、ロイ兄を見続けていた。

時計の秒針が進む音だけが聞こえる。

呼吸や心臓の音さえもこの部屋中に響いているような感じがする。

黙っているの、本当はちょっと怖かったけど。だけど、口は開かない。ただ、ロイ兄を見つめている。

覚悟、なんて。それこそオレが決めなきゃいけないことかもしれない。

だけど、ロイ兄。
オレら、一生一緒に生きていいんだろ?ならこの気持ちが恋じゃないなんて言わないで、叔父としての愛情に独占欲だよなんて牽制しないで。

好きだって、言葉に出してくんねえかな?

オレはただ、ロイ兄を見ていた。ロイ兄も、オレから瞳を逸らしはしなかった。

そしてようやくロイ兄は止めていた息をふううううっと吐き出して。しばらく迷ってたみたいだけど、それでもロイ兄は「降参だ」ってぼそりと漏らしてきた。

「本当にいつの間にこんなにも君は大きくなったんだか……。私の方が子供みたいではないか」

ははは、と笑う笑顔の奥にはまだ重たい気持ちが隠されているみたいだってオレは思う。
まだ、届かない。ロイ兄の心の奥底に隠している気持ちには。
このままだとうまくごまかされてしまうかも知れない。

それ、もうオレは嫌だ。
隠して、そうしてロイ兄だけが重たい気持ちを持ち続けるなんて、駄目だ。

まだ言葉が足りない。もっともっと、ロイ兄の心に届くように。
すぐに全部が解消できるとは思わないけど、少しでも減らせるようにとオレは慎重に言葉を選ぶ。

「違うロイ兄。ロイ兄はやっぱり大人なんだよ。だから先回りしていろいろ考えてくれてたんだろオレのこと。子供なのはオレ。何にも考えないでただ好きだって、それだけで真っ直ぐにロイ兄の方へ走って行ってた。
オレがいてロイ兄がいて家族がいて……仕事してれば社会的な立場とかもあるだろ?そんなの関係ないなんて言うのは子供だよ。自分たちだけが幸せならいいなんて、そんなのダメだ。
家族を、オレらの大事な人を不幸にするような恋なんて、そんなの単なる自己中心的な考えでしかないんだと思う。
オレはアルフォンスも母さんも大切で、心配かけるようなことなんてしたくない。皆に背を背けられるようなことはしちゃダメなんだって、よくわかったんだ。
だけど、だから。オレは、ロイ兄と幸せになる。もちろんオレの家族だって幸せになってもらう。
白か黒かの二択なんかじゃない。二兎追って二兎とも得られないようなら駄目なんだ」

「エドワード……」

考える。願う。どうか届いてオレの気持ちが。一方的に守られたいんじゃないんだ。オレはロイ兄と一緒に生きていきたいんだよ。

「ちゃんとするから。オレの気持ち、認めてもらう。オレがロイ兄と一緒にいてどんなに幸せか、それ母さんたちにわかってもらう」

オレは言葉を選びながら、気持ちを声に出していく。届いて欲しい。ロイ兄の心に。


ロイ兄は最初、駄目だよ、と困った顔をしていた。けれど瞳は逸らさない。真剣なまなざしでオレを見つめて続けていた。

そうしてゆっくりと、表情が変わっていく。
眩しいみたいに目を細めて。嬉しそうというか満足そうというかそれでも何か辛そうっていうか……なんだろう?すっごく優しいんだけどいろんな感情が入り混じったような目でオレを見てくる。
少しだけでも分かってもらえるかな?ロイ兄はきっとオレのこと守ってくれてる。叔父として、慈しんでくれてる。

だからこそ、ロイ兄はオレへの感情を恋にはしないようにって、気持ちを抑えてくれてきたんだろう。
ずっとずっと、きっとオレが気がつかないところでも強く。

――君の髪を撫ぜて、手を繋いで。まあそれで私としては十分満足だ。プラス許容するとすれば……。
そうだな、外国人ばりに頬に挨拶のキスくらいはかまわないがね?

それを言われてから何度も受けた頬へのキス。その度に、ほんの少しだけロイ兄の手が、唇が震えていたのをオレは知ってる。



なあ、気がつかないとでも思うのかよ。
オレに触れるたびに、オレへの気持ち、抑えてるんだろ?我慢なんかしないでほしい。オレのこと、守るつもりなのは嬉しいけど。
だけど、なあ、ロイ兄。オレだってもう子供じゃない。オレだってロイ兄のこと大事にして、そうして守ってやりたいって思うんだ。

一人で全部背負わないで。
一人で背負う荷物なら、潰されそうになくくらい重くても。
二人でその重さを分け合えば、そんな荷物の重みなんて気にならないくらいに軽くなると思うんだ。

だって、ロイ兄が言ったんだ。「二人で生きて行こう」って。

ロイ兄がオレを守るだけの人生じゃないんだぜ?二人で生きていくってことは幸せも重みも全部二人で分け合うってことだろう?
二人でならどんな重さでも支えられる。どんな不可能なことでも可能にできると思うんだ。そういう強さを持てるってそんなふうに思うんだ。

……なんだかうまくまとまらないけど。オレのいろんな気持ちを全部何とか伝わるようにって一生懸命言葉を選びながら話していった。

ロイ兄はオレを抱き寄せてくれた。
呼吸止まっちまうくらいに強く。オレの背中にまわされたロイ兄の腕が痛いくらいで。

だけど、その手は震えていた。

「降参、だ」
「ロイに、ぃ」
「もう駄目だ。降参だ。……手放せないよ、たとえ君の人生を歪めても」
「ロイ……兄?」

「本当に小さい時から真っ直ぐに私だけを見ていてくれて。それが、嬉しい反面……本当はずっと不安だったよ。私がエドの気持ちも生き方も歪めているのだろうとね」

抑えた声、抑え続けてきたロイ兄の感情。

「私さえ、君の前から消えてしまえば。あたり前の幸せなどいくらでも手にできるのにと、幾度考えたかわからない。
私を好きだというエドの気持ちは嬉しいが、狭い世界に居るからにすぎないんだと、もっとずっと広い世界を望むべきで、そうする力がエドにはあるのだから、そちらに押し出すべきだとずっとね、思っていたし、今もそう思っているんだよ」

「ロイ兄の傍に居るのが狭い世界にとどまることだなんてオレは思わない。世界中の全部、オレが知ったとしてもその後だって胸張って言える。
オレの好きな人はロイ兄だ。世界でいちばん愛してる。ロイ兄がなんて言おうと歪みなんかじゃねえ。オレの、心からの気持ちをそんなふうに言うな」

腕の中にぎゅうぎゅうに閉じ込められて、はっきり言って苦しいくらいだったけど、それでもオレはきっぱりと言う。

「そんなふうにロイ兄がオレのこと勝手に判断するの、オレを信じてない証拠。言っただろ?オレはちゃんと幸せになるって。
母さんたちに後ろ暗いところなんか持たねえぜ。ちゃんと好きだって言うし、それ認めてもらうし、ロイ兄と対等以上になるくらいにはオレいろんなこと勉強するつもりだし、家族、不幸にする気なんてねえし。もちろんオレはロイ兄と一緒に幸せになるんだ」

少しだけ、ロイ兄の胸を押して。ぎゅうぎゅうに閉じ込められていた腕を緩めてもらって。オレは見上げる。


眉根を寄せてちょっとだけ辛そうな表情でオレを見るロイ兄に手を伸ばす。


オレの指先がロイ兄の頬に触れる。

ちょっとだけ、びくって震えたけど、ロイ兄はオレの手を拒むことなんかしなかった。

 誰もがその声を振り返れば、未だ抱きかかえられたままの状態のドレス姿のエドワード。
そんな体制だというのに、彼の怒りの声だけははっきりとホールによく響いた。

「おい・・・・・・」
と、今度はオリヴィエ・アームストロング少将の声が不機嫌極まりない声音でホールに響いた。

「あ?」

「人の耳元でぎゃんぎゃんとわめくな」
溜まらないとばかりにオリヴィエは抱きかかえていたエドワードの身体を乱暴な仕草で床へと下ろした。

「うわ・・」
急に身体を開放されて戸惑ったのは一瞬で、エドワードはすぐさま再びファルザーノに鋭い視線を向けた。

「さっきから聞いてりゃ、好き勝手なことばかりぬかしやがって」

「あんたのそのゲームとやらのお陰で俺がどれだけ大変な思いをしたか!きっちり落とし前つけて貰うからな!」
赤い真紅のドレス姿もそのままに、ファルザーノを指差しながら声高らかに宣言するも・・・。
その様子をそれまで黙って見ていたロイが肩を震わしてて、あげく噴出すように笑いはじめた。

「あんたっ。ここは笑うとこじゃねーだろ!!」
赤いドレスに負けないぐらい顔を赤く染めて、エドワードは舞台の上のロイに抗議した。
「あああ、すまない・・・・つい、可愛らしい姿に見とれて・・・」
言いながらもまだ笑う男に、エドワードはますます顔を赤くして。
「ふざけんなーっ、誰が可愛らしいミジンコどチビかっ」
言いながら言葉の勢いもそのままに、パンと両手を合わせた。
瞬間、青白い練成光が辺りを照らし、エドワードの右腕は鋼の剣へと姿を変えた。
エドワードは一度「ブンッ!」と素振りのような仕草で剣で空を切ると、そのままファルザーノに向けてそれを構えた。
それを見てもファルザーノは表情一つ動かさず、黙って落ち着いた視線でエドワードを見下ろしている。




「おい」
不機嫌そうな声もそのままにオリヴィエは舞台の上の男に話しかける。
「何か」
悠然と答える男の態度に少しイラつきながらも、オリヴィエは顎でドレス姿の少年を指した。

「アレを止めろ、マスタング・・・」
「あれを・・・・ですか」
少しおどけた口調で言い返されたのが気にいらなかったのか、オリヴィエはギロリとロイを睨んだ。
「言っておくがクスリは完全に切れた訳ではないぞ・・・・派手に動けばあんな小さな身体だ。クスリはすぐにまた回るぞ」
「ああ、少将。出来ましたら小さいというのは是非違う表現で・・・・」
ロイの見当違いな答えに、オリヴィエの機嫌は更に急降下する。
「貴様、私にここで切り捨てられたいのかっ」
「いえ・・・・申し訳ありません・・・。ですがアレは人形などでおさまっているタマではないのです」

「貴様、よくそれで上司が勤まっていたなっ」
「上司として後見人として・・・・・なんとか偽ってここまできましたが、どうやらそれも限界のようです」
そう言って彼へと再び視線を投げた男は、少し自嘲気味に笑っているようにも見えた。
「言っていろ、無能が!ふん、好きにしろ。ただし、一億分は働いて貰うぞ」
そう宣言してニヤリと笑った顔は、一枚も二枚も自分の上をいく、あの北を統べる女王の顔だった。
「まだ支払いも済んでいないのに、取り分の主張ですか・・・・・まったく手厳しいことだ」
そう言ってロイもまた口元をあげて笑った。






「私は君には出来たら別の意味でのお相手をして欲しかったんだがね」
エドワードに鋼の剣を向けられているというのに、ファルザーノの声音は酷く落ち着きはらっていた。
この余裕がどこからくるものなのかが読めずにエドワードは戸惑っていた。

「冗談っ」
言いながらエドワードはじりじりと男との間合いを詰める。
そんな動きですら長いドレスの裾は邪魔をする。

くそっ、動きにくいっ。
瞬間、長いドレスの裾に足が絡まった!
体制を立て直そうとバランスを取ろうとするが手遅れで、その上一瞬視界がぶれた。
あ・・・・と思った瞬間にはぐらりっと身体が揺れた。

「っ・・」
倒れそうになった身体は、気がつけば何かに受け止められていて。
見ればいつの間に背後に来たのかフィオレッナが後ろからエドワードの身体を支えていた。

「悪ぃ・・・・」
「どういたしまして」
女性に助けて貰うなど男として恥だとばかりに、慌てて彼女から身体を離そうと試みる。
だが、次の瞬間・・・・ガシャリという物騒な音が耳元でした。
彼女の手には銃が握られていた。

エドワードはゆっくりとホールドアップしながらも、嫌味を言うのは忘れない。
「お礼、言ってソンしたな」
「あら・・・・・そう。ごめんなさいね・・・・・私、手の上で転がされるなんて真っ平ごめんなのよ。あなたのようにイレギュラーな動きをしてくれる存在は大歓迎だわ」
言いながらエドワードの頭に銃をピタリと押し当てた。

「楽しいところまではもう一息・・・・・足らなかったんでしたわね」
そう言ってファルザーノを振り返った。
「でしたら・・・・・私が楽しませてさしあげてよ?」
言いながら彼女は舞台にいるロイのほうに見せ付けるように、エドワードと自分の身体を向けた。

「マスタング大佐、私との最初のお約束を果たして頂きたいの」
ロイの顔からすっと表情が消えた。
フィオレッナを見つめるその双眼が、色をなくして温度を下げ・・・・そのまま静かに細められた。


覚えてらっしゃるかしら・・・・と、そう言ってフィオレッナは笑った。


   ++++++++++++++++++++++++++++++++

わぁーい、お久し振りに絡めましたっ♥
時間が開くと設定がわからなくなってるワナ・・・・涙
全部設定一から読み直しましたーっ(>_<) ←無能めっ

例によって「連ドラ」切りのようなのりですが、どうぞ続きをどなたかお願いしますっ。

つぐみ拝
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ILLUSTRATION BY nyao