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そこは幻想的な白銀の世界が広がっていて。
空からは白い妖精が舞い降り、二人は白い恋人たちとなる。
バカンスで来ていたら、ね……な話。
でも現実は厳しくエドワードの置かれている状況は今、極が10個は付くほど最悪だった。
三日三晩、ろくな食べ物もなく空腹は限界を超え、すでに麻痺している。
それでも寒さを防ぎ暖をとり凍死しなかったのは、ひとえにどこかのお金持ちな別荘があったから。
その命綱とも云うべき、お金持ちな別荘が。
―――今しがた吹っ飛び燃え尽き跡形もない。
あぁ、名残の灰が雪に混じって飛んでいく……。
どんなに情けない姿を見てしまっても冷めることがなかった、エドワードの恋心。
大人でかっこよくて甘いテノールの声が素敵な時々無能の国軍大佐ロイ・マスタングに、実は心ひそかに恋焦がれていた。
でも素直になれなくて、ついつい素っ気無い態度をとってしまっていたのだ。
本当に大好きで大好きで大好きで、今もその気持ちには何故か変化はないけれど。
ないけれど。
ないけど今。
猛烈に自分が悲しい。
大佐が、憧れのロイ・マスタングが。
まさか。
………………こんなにバカだったなんて。
冬の寒さとロイのバカさ加減が身にしみる。ここまでくれば怒りを通り越して虚しい。
心が体と同じようにとっても寒いのだ。しかも機械鎧は氷のようで。
寒くて悲しくて虚しくての3拍子が揃ってしまっているというのに、ちらほらと降っていた雪が吹雪いてきて追い討ちをかけてくれたりする。
エドワードは怒鳴ることもロイを睨む事もできず、目の前に散る白と灰色の雪を見つめていた。
ぽろり…。
あまりの情景と状況の虚しさに、悲しみが込み上げ泣けてきた。
一粒流れると、あとはもうぽろぽろと涙が止まらない。
「うっ、ううっふえ…っ」
左手でごしごしと金色の瞳をこすりながら、エドワードはとうとう声を出して泣き出してしまった。
これに慌てたのはロイとカワウソロイの一人と一匹だ。
「エ、エドワード…その、泣かないで…くれたまえ」
原因が自分にあるとはっきりしている為、ロイはシドロモドロオロオロしながらのうえ、そっとエドワードに触れようとしたが。
「さわんなっ!大佐なんか大っ嫌いだっっ!!ばかーっっ!」
「お、落ち着きなさいっエドワード…っ」
癇癪を起こしながら泣きじゃくるエドワードに触れるどころか、近寄る事すらできない。
もうすっかりお手上げ。
そんな時。
「う、うっ…くしゅんっ」
「「エドワードッ!?」」
エドワードのくしゃみに一人と一匹は驚いた。
まさか風邪を引いたのか!?
冬の寒空の下にいるのだ、風邪を引かない方がおかしい。
ちなみにロイはすでに風邪引きさんだ。でも今、はっきりいってロイはどうでも良い。
問題はエドワードがくしゃみをしたと云うことなのだ。
しかも「へっくしょん!ふぇっくしょんっ!」」と連呼している。
このままではいけないっ!風邪を拗らせてしまったら大変ではないか!
と、一人と一匹は思った。
でもその一人、ロイは成す術がない。
抱きしめて暖めようとも、すでに自分は風邪引きさん。風邪の移し合いにしかならくて不毛だ。
そして、もう一匹、カワウソロイには術があった。
「これを着たまえ」
「えっ…?」
極寒に只中にいるはずだったのに、ふわりとした温もりがエドワードを包む。
「こ、これって…」
特一級品質の毛皮(着ぐるみ)に頭からすっぽりと包まれ、エドワードの体中はほこほこ。
でも、という事は?
「っ…ぶふぇっくしよいっ!」
カワウソロイは盛大なくしゃみと共に、ズルルーと大量の鼻水を垂らしていた。
「お、おい、お前大丈夫か!」
「ぎみばじんぱいじなぐていい…だびじょうぶだ…っくしよいっ!」
ちっとも大丈夫じゃない。
そもそも妖怪変化といえど野生動物。本来この時期、彼らは寒さを避けるため冬眠中なのだ。
しかも、体温を保つ為の必需品「天然毛皮」がない。
なのに。
カワウソロイは今、すっぽんぽん。
ブルブルッと擬音が聞こえそうな程震えが酷い。
このままでは、あと数分で間違いなく凍死確実だ。
カワウソロイの意識がぼ~と遠のく。
これが、もしかしなくても長老が言っていた雪山遭難というやつなのか?
あぁ、我が人生に悔いはなし。金色のこの子が無事ならそれで良い。
でも、一度で良いから触れたかったな……。
そういえば贈り物も受け取って貰えなかったし。
悔いがないと言いながら、結構未練が残っていたりする。
そんな事を思っているうちに、いよいよ体がぐらりと傾く。
が。
今度はカワウソロイが、ふわりとした温もりに包まれた。その感触は紛れもなく自慢の特一級品質な天然毛皮で。
「こ、これは……?」
「ほら、こうすればお互い温いだろ?」
閉じかけた目を開けてみると、そこには笑顔で自分を見上げる金色の瞳があった。
な、なんて眩い笑顔なのだ!ここれはもしかしなくても抱擁ではないか!?しかも金色のあの子からっっ!
おぉっしかも私が送ったプレゼントを身に着けてくれている!
私の求愛を承諾してくれたのだーっっ!!
ぎゅーと抱きつき返す。
カワウソロイ、天にも昇る気持ちで今絶好調に幸せを感じていた。
一方、国軍大佐ロイ・マスタングは。
呆然と目の前の愛おしい子供と、自分モドキ(しかも全裸状態)の熱い?抱擁を眺めていたのだった。
え~と、時間が掛かった割りに短い(汗)しかも、こんな展開に!? どなたか続き頑張ってくださいませ~。
まいこ
気ぐるみの下って何も着てないんですね~・・・・しみじみ。確かに下着をつけているカワウソっていうのも違和感あるような~(笑)
なんだかカワウソロイとエドワードさんがいい感じになってます。このままだとそっちでハッピーエンドでしょうか(爆)きゃー、どんどん展開読めなくなっていってます~っ。
第7話を読んで、次に書きたい!と思った内容は。
・怒りを通り越して虚しくて泣いちゃうエドたん。
・わが身を(?)を犠牲にしてエドたんを守ろうとするカワウソロイ。
でした。ど~してもこの展開にしたくて立候補(汗)
次に続く方、ごめんなさい(><)