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1/2 ・拍手「黒猫ロイと金の仔猫」番外編~町へ行こう~その①
本年もロイエドな一年になるでしょう(笑)カステラ部屋を宜しくお願い致します(ぺこり)
・拍手「叔父ロイ×甥っ子エドワード」 最終話
・リレーSS「コールドレイン」第23話
コールドレイン23話
「基本的に、ご婦人と交わした約束は忘れない主義ですが……さあ、困りましたね。どんなお約束を貴女としましたか?」
ピキッと、フィオレッナのコメカミに青筋が刻まれる音が、エドワードには聞こえたような気がした。
背後にいるフィオレッナの表情を見ることは適わないが、それでも気配が尋常ではないのは分かる。
お、怒ってる?…よな、それも思いっきり。って、こいつ怒らせてどうするんだよ、大佐っ!
「あなた、今どういう状況か分かっていて、そのような事をおっしゃっているの?」
ひーっ、声が地を這っているよ~っ!!ついでに、俺のコメカミに当てられていた銃口が食い込むようにグリグリと押されているんですけど?!
エドワードの心の声は騒がしい。
ロイの言葉は明らかにフィオレッナの逆鱗に触れている。会場にいるすべての者は、ロイの失態だと思った。
いや、アームストロング少将と、ファルザーノはそうは思っていないようだが。
「これは、面白い見物だな」
「確かに…なかなかの趣向ですな」
二人揃って、実に愉快そうだ。
「あんたら不謹慎だろーっ!」
「うるさい。二度も捕まりおって、お前はそこで反省していろ」
「ははは、エドワード君。何なら私の胸にくるかね」
「………ヤナこった」
ダンッ!フィオレッナが地団駄を踏むように、床を鳴らした。
「いい加減にしてくださらない!エドワード、あなたまで何漫才に参加しているの?!このまま撃ったって、私は構わないのよ」
「あ~、それは勘弁」
「なら、大人しくしていなさいっ!」
もう一度、銃口をエドワードのコメカミに強く押し当てた瞬間。
―――大人しくするのは貴女の方ですよ。
甘いはずのテノールの声が、冷たい氷のような響きを放った。
フィオレッナがロイへと視線を向けるより早く、赤い一筋の閃光が彼女へと走る。
「なっ……」
何なの!と声にする間もなく、一筋の焔がフィオレッナの右頬をかすめたのだ。その瞬間、怯んだ彼女の腕からエドワードは自力で脱出をする。
「あっ、危ねーだろ!俺まで燃やすつもりか、クソ大佐っ!!」
うがーっ!とエドワードは吠えるが、この状況下において場違いなほど和んでいる御方が二人いる。
「良い判断だ」
「ははは、貴女が好みそうですな」
面白くないのはフィオレッナだ。まさか、エドワードを盾にしている自分にロイが焔を放つなんて思いも寄らないことだ。
「いい加減に……っ」
だが、言葉はそれ以上続かなかった。
不覚にも、自分に向けられた漆黒の眼差しに射すくめられたのだ。しかも、発火布をした指先が、一寸の狂いもなくフィオレッナに合わされている。
「……それが、貴方の答え。意外ですわ、ロイ・マスタング大佐」
「残念ながら、答えは最初から決まっていましたよ」
そう、貴女が<彼>を人形にした時点で、ね。
「だからと言って、か弱い女性に対して……この仕打ちはどうかと思うわ」
軽くサイドの髪に触れると、美しい銀色の髪が黒く焦げていた。ほんの数ミリずれていたら……。
ギリリッと、唇を噛む。
自慢の、しかも顔に向けられた焔。
だが、そんなフィオレッナにロイは同情の眼差しなど向けない。変わらず発火布を翳したまま言い放つ。
「私は、貴女をか弱い女性などとは思ってはいませんよ」
焔を放つに等しい<敵>と認識している、と。漆黒の瞳をフィオレッナへと突き刺す。
再び焔を繰り出しそうな緊張感に、会場内は固唾を呑んで誰も身動きすらできない。そんな緊迫した中、ファルザーノの豪快な笑い声が飛んだ。
「はははっ!フィオレッナ、お前の負けだ。マスタング君はお前の夫にはなる気はないようだ、諦めなさい」
「お父様っ!」
「フィオ、完全に振られたな。それとファルザーノ、そいつはお前の娘婿にもならない、という事だ」
オリヴィエ・アームストロング少将の凛とした声が通る。その声はどこか楽しげで、ファルザーノも世間話をするように会話を続けた。
「ま、そういう事ですな。では、どなたか他に良い婿殿はいませんかな?少将殿」
「まずは、あのじゃじゃ馬をどうにかしないとどうにもならん」
「ははは、貴女様にそう言われては立つ瀬がないですな」
和んでんじゃねーよ。フィオレッナから安全圏まで離れていたエドワードは、げんなりしながら思った。というか突っ込まずにはいられなかった。
そんなエドワードに、ロイが近づいてくる。フィオレッナへの攻撃態勢は、父親であるファルザーノの言葉によって既に解かれていた。
これ以上は必要ない。
それは少将も認めているはず。
そして、フィオレッナにとっては分が悪すぎる。無理やりにでも、彼女は努めて感情を鎮めるしかない。
――来るべき日――は、まだ自分にはやってはこない。
初めて味わう<敗北と屈辱>。
だが、愚かで浅はかな女ではない。
引き際を間違えたりはしない。フィオレッナがそういう種類の人間であることは、オリヴィエも充分に承知している。
「フィオ、今回はお前の完敗だ。そうだろう?」
「……ええ、そうですわ」
「それから、早くその髪をなんとかしろ。自慢の銀髪が台無しだ」
「そうさせてもらいますわ」
立ち去りかけたフィオレッナが、立ち止まる。振り向かず、背中を向けたままオリヴィエに話しかける。
「まだ、問題は残っているのでは?」
「ああ、そのことは当人達の問題だ。お前が気にする事はない」
「別に、気になどしていませんわ」
「そうか?」
「ええ、そうですとも」
そのまま奥に去るフィオレッナを見ながら、オリヴィエの口元がほんの少し緩む。
「まったく、お前の娘は素直ではないな」
「あの勝気なところが良いのですよ」
「だが、度を過ぎると火傷をする。父娘ともしばらく大人しくしていることだ」
「少将殿のご忠告とあれば、無下にはできませんな」
今回は完全に自分達の負けだ。これ以上こちらが手出ししなければ、オリヴィエは少将としてではなく、ただの客として何もしないはず。
だが、恐らく次はないだろう。
「止むを得ませんな…」
丁寧にお辞儀をするとファザー・コルネオもまた、奥へと姿を消した。
だが、頭を下げながらも、その後姿は最後まで威風堂々として媚びることはなかった。
オリヴィエの口端が上がる。
「いずれ、本気で対峙する時が楽しみな男だ。そして娘もな。あとは………あの無能だ。一億センズの価値がなければぶった切る」
さあ、どうする? お前に男としての価値があるのかどうか、特と見させてもらうぞ。
ようやく、会場内は動き出していた。
武装集団はコルネオ家の警備と部下に取り押さえられ、怪我人は別室へと運び出される。
そして、ロイは未だ床に座ったままのエドワードを抱え上げた。
「えっ?!」
目の前にやってきたかと思うと、ふわりと抱きかかえられ、しかも、それがお姫様抱きなのがエドワードにはもの凄く恥ずかしい。
「あ、あんた何やってんだよ!」
「そうだね、私は何をやっていたのだろうね」
「へ?」
真摯な物言いと眼差しに、エドワードはぽかん、としてしまう。
「エドワード……今度は、私達の番だ」
「え、番って?」
「あの雨の日の事を、もう一度……」
抱きかかえているエドワードの体が、ビクンとほんの少しだが揺れた。
急に俯いてしまったエドワードを見ながら、フィオレッナに投げかけられた言葉の数々を、ロイは思い出していた。
やりかたはどうであれ、ロイの心に一石を投じたのは間違いなくフィオレッナだ。
だから、どんなに許せなくとも、紙一重で頬を掠らないよう焔を調整したのだ。でなければ、髪ではなく顔を焼いていただろう。たとえ、それが女性であってもだ。
思いを巡らせるのは、あの雨の日。
ずっとロイを待っていたエドワード。
ずっと雨に濡れているエドワードを見ていたロイ。
何も言えず、何も聞けず、ただ冷たい雨だけが降り注いでいた。
本当なら、互いに言わなければならない言葉、聞かなくてはならない言葉があったはず。
そして、それは今からでも遅くはない。
「こちらを、私を見ておくれ……エドワード…」
俯いたままの、愛おしい人の名をロイは呼んだ。
えっと、つじつまはあっていますよね?(←とりあえず復習した人)
友よ、後は頼んだぞっ!(←またこの手で逃げた)
まいこ
・拍手「叔父ロイ×甥っ子エド~誘惑の12月~」中編
・黒猫ロイと金の仔猫・初めてのお散歩・後編