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初めてのお散歩
~黒猫ロイと金の仔猫・番外編~
~黒猫ロイと金の仔猫・番外編~
前編
外は木枯らしが吹いていて、でも日当たりの良い縁側は硝子から差し込む陽射しもあってほこほこ。
それ以上にコタツの中はぽこぽこで。
そんなコタツの中でのお昼寝から目が覚めて、ふとんから出てきたのは金色の毛並みをした仔猫、エドワードだ。
珍しい金色の毛並みだけど、お腹はやっぱりふかふかの真っ白で、とってもキュートで愛らしい。
そんな愛らしいエドワードのちょこん、とついている三角の耳がぴこぴこと不安げに動いている。
「にゃ?」
何故か一緒に寝ていたはずのアルフォンスもいない。いつも側にいてくれるロイもいない。もちろん、飼い主イズミは仕事でいない。
八畳の和室にはコタツとみかんとエドワードだけ。誰もいなくて静かな部屋はとっても心細い。
「にょ……にょい…」
呼んでも返事がない。
いつもなら「起きたのかね、エドワード」と言って舐めてくれるはずなのに……。
「う、ふぇ…にょい」
もう大きな金色の瞳には涙がてんこ盛りで、今にも溢れて零れ落ちそうだ。てけてけと障子を前足の爪で開けて、縁側に出る。
もしかしたら、アルもロイもお日様で日光浴をしているかもしれないから。
でも、
「い、いない…アルもにょいもいない…」
広い縁側には日光が燦燦と注がれているだけ。
ぽろり、と溜まっていた涙が縁側に落ちると、次から次へとぽろぽろ零れ落ちて止まらなくて、それがまた寂しさに拍車をかけてしまう。
「……にょい、アル…ふぇ~ん」
「あー、大将!ほらハボックのお兄ちゃんがいるだろ~」
「はにょっく?」
「そう!はにょっく!」
尻尾をブンブンと振って壁にしがみ付いて叫んでいるのは、お隣の大型犬ハボック。
『いいかハボック。万が一、誰もいないときにエドワードの目が覚めてしまったら、その時はちゃんと相手をしているのだぞ。間違っても外へは出すな、いいな』
と、きつくロイからお達しを受けている。
と、もう一つ。
『エドワードは、私のだ。分かっているな』
と、更にきつく念押しされていた。
『もちろんっす!ロイさん!』
『よし。では頼んだぞ』
『いってらっしゃいっす!』
そんな会話がなされたのは、一時間前。
ついでに、
『ハボックのお兄ちゃん、ぼくもお散歩にいってくるねー』
と、アルフォンスが縁側のガラス戸をカシカシ、器用に前足で開けて散歩に出かけたのが半時間前。
で、現在に至る。
金色の仔猫エドワードは、お散歩デビューはまだだった。ロイの許可が下りないのだ。
それはアルフォンスだって同じはずなのだが、好奇心旺盛な仔猫はロイに叱られても連れ戻されても、連日果敢にチャレンジ。
ついには、ロイも根負けしてしまい認めてしまった。
そうなれば、
「おれもおさんぽにいく~!」
と、エドワードが言い出すのも当然で。
でも、少しずつでも成長しているアルフォンスと違い、エドワードはまだまだ小さい。というか、<ちんまり>としたなりだ。
首もとの鈴がアルフォンスのものより大きく見えるのは気のせいか!?というほどに、アルフォンスとは成長速度が違う。
お散歩などさせたら―――。
「いや~ん!!きゃばいいvv」
もみくちゃにされ、首輪が付いているのにお持ち帰りされてしまうかもしれない。危険だ、あまりに危険極まりない。
だが人間だけでなく、ご近所の猫たちだってエドワードには危ない存在だ。
メス猫だけならまだしも、不埒な変態オス猫に絡まれたりでもしたら!
「そんなこと、この私が断じて許さん!」
その不埒な変態オス猫の最たるがロイさんです。とは、ハボックは決して口には出さない。でも、ロイにしてみれば「お前は不埒な変態犬の一歩手前だ」なんだそうだ。
確かに、ハボックは犬でありながら猫のエドワードが可愛い。鎖に繋がれていなければ、駆け寄ってロイがするように舐めてやりたいのだ。
『ほ~ら、エドは本当に可愛いなぁ』
『はにょっく、くすぐったいよ』
『あはは、エドはお子様だな』
妄想はどこまでも膨らんで幸せいっぱい夢一杯。
でも黒猫ロイさんが怖い。実際にはしていないのに、こんな妄想をしていると知れたら……。
猫なのに、ロイの威圧は大型犬よりも大きい。
考えただけで、ハボックの尻尾が縮んでしまった。
まあ、ロイさんの心配も分かるし、とにかく大将が外に出ないようみておかないと。
とにかく、お散歩はロイと一緒に、と決まっている。その日時を決めるのもエスコートをするのもロイだ。
だけど、肝心のロイといえば、
「外気にさらすなど、もっての外だ!」
そんなこんなで、エドワードのお散歩デビューの日はまだまだ遠い。
でも、今日は何だかエドワードのご機嫌が悪い。縁側のガラス戸の隙間からぴょん、と飛び出ると。
「はにょっくはにょっく!にょいはどこ!?まだおさんぽからかえってないの!」
「まあ、ご近所の見回りは忙しいんだよ」
「じゃ、アルは!?アルはどうしておさんぽしていいの!」
「あ~、まあ、ロイさんの許可が下りてるし」
「おれは!?アルはいいのにどうしておれはだめなの、はにょっく!」
そんな舌っ足らずは犯罪級に愛らしくて、ハボックは悩殺されまくり。
ただでさえ小さくて可愛いのに、「はにょっく」なんて呼ばれてどうしよう!? どきどきが止まらなくて大変だ。
種族の違う犬でさえ、こうなのだ。
だから外出禁止。
「ほら、ロイさんが初めてのお散歩は一緒に、って言っているだろ?だから、それまで良い仔で待っているんだよ」
………いつもなら、これで大人しくなる。ぶう、と拗ねていても、アルやロイが帰ってくるまでハボックとお話をして待っているのだが。
「おれだってもうおさんぽできるもん!!」
「え!?お、おいっ、大将!?」
ハボックが止める間もなく、小さな体が垣根の下をくぐってしまった。
庭には愛らしい金色の仔猫はいない。縁側にいるはずもなく。目をぱちぱちさせたってダメ。
あれほどロイに念押しされていたのに。
「ま、…まじっすか……」
大事件発生。
箱入り仔猫エドワードが、なんと一匹で外へと出てしまったのだ。
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何故に和室?
だって、猫にはコタツとみかんと和室がセットなんですもの(汗
あと、時間軸と成長過程も怪しい・爆
まいこ 08/11/11
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